2008 Fiscal Year Annual Research Report
偏微分方程式系に対する解の一意接続性・極限吸収原理とその応用
Project/Area Number |
18540173
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大鍛治 隆司 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (20160426)
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Keywords | ディラック作用素 / スペクトル / 極限吸収原理 / 相対論的シュレディンガー作用素 / 強一意接続性 |
Research Abstract |
研究代表者大鍛治隆司は、1階楕円型偏微分方程式系の中でも数理物理学における最も重要な方程式の一つである相対論的粒子の運動を記述するディラック方程式をとりあげ、その定常作用素のスペクトルを極限吸収原理の立場から研究を行った。特に、いままで取り扱いが困難であった空間遠方で減衰しないポテンシャルクラスの代表例として、零次斉次ポテンシャルを考え、対応するディラック作用素に対する基礎不等式をスペクトルパラメーター全域で成り立つことを示した。即ち、光速度パラメーターが十分大きいときには、ディラック作用素はあるユニタリ変換を用いて符号の異なる一対の相対論的シュレディンガー作用素の摂動と捉え直すことが可能であることに着目し、まずその第1近似である相対論的シュレディンガー作用素に対する一様な極限吸収原理(ある種の重み付きL2評価)をスペクトルパラメーターの除外値なしで成り立つことを示した。そのための方法として、標準的なMourre理論(交換子法)ではなく、いわゆる弱共役交換子法を用いることとし、付随する共役作用素として通常の場合とは異なるある新しい作用素を採用した。この作用素はポテンシャルに依存しないことが重要である。この評価式から、光速度が十分大きい場合には、ディラック作用素が1階システムであるという特性をうまく生かした摂動論的考察を加えることにより、ディラック作用素自体についても同様の極限吸収原理が除外点なしで成り立つことが示される。この一つの結論としてディラック作用素のスペクトルは絶対連続スペクトルしか持たないことが従う。この結果を踏まえて、時間発展作用素の時間無限遠方での挙動について調べるために、その第1段階として、対応する相対論的シュレディンガー作用素に対しての時空間評価式についての基礎的考察を行った。また、これらの結果とは独立に、他のシステムも視野に入れて、流体現象に現れるストークス方程式の解の強一意接続性についての考察を行い、従来の結果を改良することが出来た。
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Research Products
(2 results)