2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540221
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
砂田 利一 明治大学, 理工学部, 教授 (20022741)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 元子 東北大学, 理学研究科, 教授 (50230024)
|
Keywords | 結晶格子 / 格子振動 / K_4結晶 / 離散的ラブラシアン / 大偏差原理 / ランダムウォーク |
Research Abstract |
結晶格子の様々な話題についての研究成果を報告する。 1)まずShubin教授との共同研究において、結晶の格子振動の数学的理論を確立した。結晶の比熱については、アインシュタインやデバイらによる量子物理に立脚した理論があるが、最新の結晶格子上の幾何解析学を用いて厳密な理論を構成するのが、この研究の目的であった。このため、結晶格子上の振動方程式に対するスペクトル理論を援用し、跡公式と直積分分解を利用することにより、デバイのT^3法則を厳密な方法で導出した。この中で、振動方程式の連続極限の意味を明確化し、弾性波動方程式のスペクトルと振動方程式の音響型固有値の漸近挙動との関連を明らかにした、 2)小谷元子氏との共同研究では、結晶格子上の非対称な周期的ランダムウォークに対する大偏差原理の幾何学的意味を明らかにした。さらに、到達領域のスケール極限が凸多面体となることに注意し、これが結晶格子のグロモフ極限に対する単位球体となることの完全な証明を与えた。さらに、有限グラフの最大アーベル被覆グラフとして与えられる結晶格子に対しては、この凸多面体の組合せ論的特徴づけを与え、頂点や面の確率論的な意味を与えることにも成功した。 3)ダイヤモンド格子は、最大対称性を有するだけでなく、等質・等方的性質を有するが、これと同じ性質をもつ3次元結晶の研究を行った。結果としては、ダイヤモンド格子以外にもう1つの結晶格子が存在することが分かった。それは、4つの頂点を持つ完全グラフの最大アーベル被覆(K_4格子)であり、その実現は標準的実現とよばれるものである。ダイヤモンド格子が6員環からなるのに対して、K_4格子は10員環からなる。また、ダイヤモンド結晶がキラリティを持たないのに対して、K_4結晶はキラリティを持つ。現在、K_4結晶が現実に存在するかどうかは知られていない。
|