2006 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論とM理論のダイナミックスおよびその共変的定式化の研究
Project/Area Number |
18540252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
風間 洋一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60144317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 幸士 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助手 (80345074)
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Keywords | 超弦理論 / 超共変的量子化 / ピュアスピノル形式 / 超膜理論 / Dブレーン / ソリトン / インスタントン / 宇宙ひも |
Research Abstract |
風間は、超対称性とローレンツ対称性を同時に明白な形で実現する超弦理論の新しい超共変的量子化の形式である「ピュアスピノル(PS)形式」の研究を続行した。前年度では、従来のGreen-Schwarz形式において、spinor場の数を二倍にすると同時に新たなフェルミ的な局所対称性を導入する、という「double-spinor formalism」を開発し、それまで知られていなかったPS形式の世界面上の基本的作用とその対称性を明らかにすることに成功したが、今年度は、このアイデアを超弦理論の背後にあると思われるM理論に深く関係した超膜理論に適用して、超膜理論の超共変なPS形式を構築する研究を行った。その結果、古典論の範囲では、「double spinor formalism」は超膜理論の場合にも系統的に適用することができ、超膜の運動を完全に支配する閉じた第一種の拘束代数を導出することに成功した。これを量子力学的に実現する問題は、超弦理論の場合と異なり自由場による表示を閉じた形で求めることが困難であるため、今後の課題として残されたが、問題の本質的な部分を解析する研究を進めた。 一方、橋本は、弦理論の非摂動的物体であるDブレーンと、ゲージ場の理論のソリトンについて、特定の場合に詳細な比較を行い、特にDブレーンの知られたダイナミクスから、ソリトンの新しい性質を引き出すことに成功した。Dブレーンとソリトンの対応を調べることは、弦理論の定義に迫る問題において有用である。今年度は、(1)インスタントンの配位空間に対して幾何学的解釈をどう与えるかという問題、(2)ソリトン宇宙ひもが互いに衝突する際に常に組替わるという事実の発見、(3)超対称性が自発的に破れる新機構を持つ場の理論におけるソリトンの存在、のそれぞれについて研究し学術雑誌に発表した。いずれの研究に於いても、Dブレーンのさまざまな性質を応用することで、場の理論では解析が非常に困難な問題について解答を与えている。Dブレーンによるゲージ場の理論の解析が実用的に有用であることを陽に示し、Dブレーンすなわち弦理論と、ゲージ場の理論の間の新しい関係を提示したことになる。
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