2006 Fiscal Year Annual Research Report
有限バリオン密度におけるハドロン・クォーク物質の量子相転移
Project/Area Number |
18540253
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
初田 哲男 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (20192700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江尻 信司 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (10401176)
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Keywords | 高密度核物質 / 格子量子色力学 / 核力 / カラー超伝導 |
Research Abstract |
ハドロン間相互作用研究の第一歩として、重いチャーモニュームと軽いハドロンの相互作用、特に低エネルギーでの散乱長を、格子量子色力学シミュレーションに基づいて研究した。チャーモニュームと、π中間子、核子、ρ中間子の格子上での全エネルギーを格子体積の関数として考察することで、散乱長を引き出した。低エネルギー定理を反映して、チャーモニュームとπ中間子の相互作用は小さいが、チャーモニュームと核子はクォーク交換がなくグルオン交換のみに起因する強い相互作用を持つことがわかった。このことは、重イオン衝突実験におけるハドロン起源のチャーモニューム抑制機構の問題と密接に関係している。 高密度バリオン物質、特に中性子星内部で実現されるハドロン物質からクォーク物質への相転移現象は、いまだその詳しい性質が未知のままである。われわれは、相転移領域におけるカイラル対称性の回復とカラー超伝導の発現の相互関係に着目し、ギンツブルグーランダウ理論の枠内で、可能な相構造を分類した。その結果、量子色力学における軸性異常がもたらす結合項の影響で、ハドロン物質からクォーク物質への転移が、低温では滑らかなクロスオーバーとなり、さらに温度が上がるとクロスオーバーから一次相転移に変わる臨界点が現れる可能性を示した。この臨界点は、ストレンジクォークの質量が無限大とみなせる場合には消失することもわかった。どの温度密度でこの臨界点が現れるかは、対称性の議論では判断できないので、高密度物質に関する様々なモデルを用いて定量的な検討を行った。
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