2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540263
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
延與 佳子 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 准教授 (40300678)
|
Keywords | 分子動力学 / 不安定原子核 / クラスター / 原子核構造 |
Research Abstract |
最近、中性子過剰核での2中性子相関が注目されている。密度の薄い領域に強い2中性子すなわちスピンゼロの2核子相関が見られる可能性が指摘され理論・実験で注目された話題となっている。我々は、中性子過剰なHe同位体の基底状態および励起状態を理論的に研究し、6Heや8Heにおいて2中性子相関について解析を行った。その結果、例えば6He基底状態において発達した2中性子クラスターは、8Heにおいてはスピン軌道力の効果で壊れやすいことがわかった。注目すべき結果として、8Heにスピンパリティ0+の励起状態が出現することを理論的に予言し、この状態が2つの2中性子がαクラスターの周りを回るα+2n+2n構造が発達する可能性を示した。2つの中性子は非常に緩く束縛して密度の薄い気体的状態であることを示し2中性子凝縮状態の候補であることを理論的に示唆した。さらに中性子過剰な7Hの構造を研究し、2中性子クラスターが出現するかどうか調べた。その結果、7H基底状態における2中性子相関は、8He基底状態よりも強い可能性が示唆された。これは、7Hでは中性子が緩く束縛されていて密度の薄い中性子スキンが出現することが要因と考えられる。中性子過剰な原子核において2中性子凝縮が起こる可能性を指摘した画期的な成果である。 また、ハドロン3体系の問題では、K中間子が1つの核子に非常に緩く束縛された系が存在しうることを指摘し、そのような系ではアイソスピンがゼロのK-N対における強い相互作用のために(K-N)クラスター構造が現れるという理論的示唆を得た。
|