2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川合 光 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (80211176)
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 時空の生成 / 構成的定式化 / 統一模型 / 量子重力 / II B行列模型 / 曲がった時空 |
Research Abstract |
超弦理論を構成的に定義することによって、例えば格子ゲージ理論におけるように、いろいろな物理量が少なくとも原理的には可能な数値計算によって求まるようし、重力まで含めた究極の統一模型を構築することを目的とし、研究を進めた。本年度は大まかに次の2つのことを追求した。ひとつは、IIB行列模型を数値的および解析的な手法によって分析する試みである。具体的には、平均場近似に対する高次補正を計算し、行列の固有値分布をもとめ、時空が力学的に生成される様子を調べた。このような計算により、どのような時空次元がより安定であるかが吟味できるようになる。まだ確定的ではないが、現段階の近似は、4次元時空がもっとも安定であることを示唆している。これは、なぜ我々の時空が4次元であるかに超弦理論から答えうることを示しており、非常に興味深い。もうひとつの試みは、行列によって、どのようにして曲がった時空が記述できるかを調べることである。そのための第1歩として、行列を、多様体上の正則表現に値をもつ場に対する線形作用素とみなすことにより、D個の行列のなす空間が任意のD次元多様体を含んでいることがわかった。行列をこのように解釈すると、IIB行列模型における経路積分は10次元以下のすべての時空を含んでいることになり、そのうちのもっとも安定なものとして我々の4次元時空が実現されているという、時空に対する新しい解釈が得られる。また、IIB行列模型の古典的な運動方程式は自然にアインシュタイン方程式を再現していることがわかった。現在、このような行列模型の新しい解釈と超弦理論の関係を調べているが、この方向の理論が完成した暁には、宇宙初期の時空構造をはじめ、今までの理論では考察できなかった時空の根本的構造にせまることができるようになると思われる。
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