2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540267
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植松 恒夫 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (80093194)
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Keywords | 素粒子論 / 量子色力学 / 摂動論 / 高次効果 / QCD / 光子構造関数 / ヘリシティ / 多粒子散乱振幅 |
Research Abstract |
本研究計画では、強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)の摂動論の高次効果を従来のNLO(Next-to-leading Order)の近似からさらに一歩進めて、NNLO(Next-to-next-to-leading Order)の精度で検討し,その新たな計算手法を開発・発展させることを目的とする。標準模型の確立にとっては、素粒子の質量を説明するヒッグズ粒子を実験で発見することが重要な課題である。2007年にCERNで稼働を始める陽子・陽子衝突型加速器、LHCはこの粒子の発見を超対称性の探索と並ぶ大きな目標の1つに設定している。この過程では、強い相互作用の効果をQCDに基づいて正しく評価することがきわめて重要となる。一方、近い将来に計画されている電子・陽電子衝突型線形加速器、ILCにおいてはさらに標準模型およびその超対称化版の精密な検証の実験が計画されており、ここでもトップクォークやヒッグズ粒子の生成断面積・崩壊幅等の精密な評価にQCDの高次効果の理論的研究が重要となる。当該研究計画の初年度である平成18年度は、これまで数年間にわたって行ってきた、ILCで測定可能な仮想光子の偏極構造関数について、QCDでの高次輻射補正をNNLOのオーダーで求める研究を行った。特に、横浜国大の佐々木賢氏らとの共同研究により、g_1^γの1次のモーメントに対するNNLOでのQCD高次効果を求めることに成功した。また、この偏極光子構造関数について、実光子から仮想光子への移り変わりをNLOの近似で調べた。これらにつき論文を発表すると共に、2006年9月にオーストリアのオーバーベルツで開催されたQCDに関する国際会議で発表した。一方最近、QCDの摂動計算でツイスターとよばれるスピノルを用いた、2体からn体へのいわゆる多粒子散乱振幅の計算に関心が持たれている。外線の全てのグルーオンのヘリシティが正の振幅について、自己双対ヤン・ミルズ場を用いて1ループの解析を行い、その中間的結果について2007年春の物理学会で報告した。また2007年3月には、QCDの最近の成果につき、KEKおよび海外からの研究者を交えて京都で研究会を開催した。計画の遂行にあたっては、横浜国大・KEKの研究者との研究交流が有益・不可欠であった。
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