2007 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的重イオン衝突実験で見られる動的相転移とクォーク・グルオン多体系の物性研究
Project/Area Number |
18540278
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
津江 保彦 Kochi University, 理学部, 准教授 (10253337)
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Keywords | クォーク・グルオンプラズマ / カイラル対称性 / 動的相転移 / QCD物性 / 高エネルギー原子核衝突 / 多体系 / 変分法 |
Research Abstract |
非可換ゲージ場であるグルオン場に対して、そのゲージ不変性を維持した形での時間依存変分法を構成し、量子グルオン場に対してリュービル方程式を導くことに世界で初めて成功した。この形式では種々の演算子の期待値が計算可能である。久保の公式によると、エネルギー・運動量テンソルの交換関係の期待値により、輸送係数の一種であるずれ粘性や熱伝導率が表されるので、期待値計算可能な我々の枠組みでこの計算を行い、最終的な数値計算までには至らなかったものの日本物理学会においてその研究成果を報告した。クォーク・グルオン流体の輸送係数は、近年の高エネルギー重イオン衝突実験で得られたクォーク・グルオン多体系の流体的特徴を検証する重要な物理量であり、世界的にも多くの研究者により様々なモデルで計算が為されているが、これらの量を基礎理論であるQCDに密着した形で評価する意義は大きい。また、カイラル相転移に関しては、ゴールドストンの定理を満たす形での我々の変分法の結果に基づき、現在数値解析を行っている最中であり、近いうちに成果が得られると期待されている。また、相転移に関しては、簡単な代数模型により、乱雑位相近似を超える変分的な手法を構成し、論文として公表した。また、この研究成果を生かして、対相互作用するクォーク多体系のモデルとしてPetryモデルを取り上げ、クォーク3体のハドロン多体系となるか、クォーク多体系となるかを種々の量子状態を用いて検討を始めている。クォーク・ハドロン相転移も高エネルギー重イオン衝突実験で実現されると考えられており、代数モデルの範囲内ではあるが、詳細な検討が可能なモデルであるので意義深い研究テーマであると考えている。
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Research Products
(4 results)