2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540305
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鈴木 博 The Institute of Physical and Chemical Research, 川合理論物理学研究室, 専任研究員 (90250977)
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Keywords | 超対称性 / 格子ゲージ理論 / 数値シミュレーション / 非摂動論的効果 |
Research Abstract |
当研究の目的は、格子定式化の応用の範囲を拡げ、第一原理からの非摂動論的解析がこれまで不可能であった系の研究を可能にすることである。この目標のもと、本年度は、超対称性ゲージ理論の格子定式化に関する研究を行い、以下の研究成果を得た。超対称性の基本代数は無限小並進変換を含むが、一方格子上では離散的な並進だけが実現できる。この理由のため、超対称性理論の格子定式化は基本的に極めて難しい。近年この問題に対する理論的理解が進み、少なくとも低い時空次元の超対称ゲージ理論に対しては、連続極限で超対称性が回復する、という形で理論の定式化ができるのではという指摘がなされた。より具体的には、全ての超対称性変換のうち、冪零な部分代数の部分だけを厳密に保つ格子定式化を使うことで、残りの超対称性が連続極限で自動的に回復するというシナリオである。我々は、この摂動論に基づいたシナリオが、はたして非摂動論的レベルで実際に実現しているのか?という問題に対して、ここ2年間ほど精力的に研究を進めてきた。さまざまな試行錯誤の後、最終的に2次元のN=(2,2)超対称Yang-Mills理論の杉野による格子定式化を取り上げ、この定式化における超対称Ward-高橋恒等式を数値的に測定した。その結果、有限の格子間隔では壊れていた超対称性が、連続極限では確かに全て回復している強い証左を得た。これは、格子ゲージ理論において、格子正則化が壊している超対称性の連続極限での回復を確認した世界で初めての例である。これにより、少なくとも低い時空次元の超対称ゲージ理論に対しては、確かに格子定式化による非摂動論的研究が可能になることが期待される。実際、この結果に基づき、我々は、上の理論における大局的対称性に付随したNoetherカレント間の相関関数、基本表現の電荷間のポテンシャルエネルギーなどの物理量の観測も行い、従来なされていた理論的予想との比較を行った。
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