2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540309
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
長尾 辰哉 群馬大学, 工学部, 助教授 (00237497)
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Keywords | 共鳴x線散乱 / 多重極秩序 / 散乱振幅公式 / f電子系 |
Research Abstract |
ランク2以上の多極子秩序相が主としてf電子系物質で予想されている。その秩序の直接観測の可能性をもつプローブとしての共鳴x線散乱実験によるデータの解析、及び予言を念頭に研究を行った。「研究の目的」では、局在性が強く、バンド理論の適さないf電子系に対して適用可能な散乱振幅の公式を導くこと、その公式の有用性を示すため、いくつかの物質に対して公式を適用し、主としてスペクトル解析の重要性を強調しつつ実験の解釈や予言を行うことを謳った。実際に平成18年度の前半では、四極子-四極子遷移に関する散乱振幅の公式を定式化することに成功した。これは報告者がすでに発表した双極子-双極子遷移に関する成果と合わせ、従来の定番であった「速い衝突の近似」を用いない、エネルギー・プロファイルを定量的に扱える唯一の理論である。これを実際に、Ce_<0.75>La_<0.25>B_6の秩序相で提唱されている八極子秩序の可能性に適用してみた結果、この系の共鳴x線散乱の実験スペクトルを再現し、スペクトル解析の重要性を指摘することができた。さらに、応用上重要なドメインの及ぼす影響についても、従来の研究で見落とされていた点を指摘した。この事実は、従来重宝されていた、対称性のみから議論可能な方位角依存性がドメインの存在比で変化するため、対称性の決定に対して威力を失うこと、また、この系のように、スペクトルの形がドメインの存在比によらない系では、秩序変数の同定のためにはスペクトル解析が欠くことのできない情報であることを示した。以上の成果は出版済みである。上記の研究の進展が予想より早かったため、年度後半になる前から、triple-k型の多極子秩序相が予想されているアクチナイド酸化物に適用した研究を開始することができた。実験結果をよく再現する結果を得、いくつかの予言も行った。成果の1つは出版済み、もう一つは投稿中である。
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