2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540309
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
長尾 辰哉 Gunma University, 大学院・工学研究科, 准教授 (00237497)
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Keywords | 共鳴x線散 / 多重極子秩序 / 多極子遷移 / 非弾性散乱 |
Research Abstract |
申請時の研究目的は,前年度定式化に成功した多重極秩序相の共鳴x線散乱振幅の公式を用いて,以下の4点を遂行することであった。すなわち,公式のf電子系への適用,長周期の磁気構造へ公式の拡張,局所的に空間反転性の破れている系での双極子-四極子遷移の解析,共鳴x線非弾性散乱の定式化である。順に成果をまとめる。 1.多極子秩序相の典型例である,八極視子秩序を示す5f電子系物質を例に,公式を適用した。f電子を直接観測する電気四極子遷移を扱った最初の理論研究である。 2.f電子系の長周期磁気秩序相の解析用に公式を拡張することに成功し,典型物質(Ho)へ適用してスペクトル解析を行った。双極子遷移にもかかわらず,4次のサテライト、スポットで散乱強度が観測されることを予言した。これは共鳴x線散乱が中性子散乱と違い,高次ランクの強度の検出に優れていることを示唆する重要な成果である。 3.局所的に空間反転が破れている系として,典型物質に対し(マグネタイト),パリティ奇の遷移に共鳴x線散乱のスペクトルを解析し,実験を包括する結果を得た。 4.局在双極子(スピン)の励起が銅酸化物において共鳴非弾性x線散乱で観測できる可能性に気づき,2マグノン散乱励起のスペクトルの理論計算に初めて成功した。 全体として,局在電子系における共鳴x線散乱のスペクトル解析の有用性を示す成果とみなされてる。以上の成果は,ほぼ実験計画に沿って得られた。1.4.の成果は論文として出版済み。2.3.の成果は投稿論文執筆中。また,全ての成果は物理学会または国際シンポジウムで発表済みで好評を得た。学会とシンポジウムへの参加は実験家と,他大学への出張は理論家と議論が特に有益であった。
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