2006 Fiscal Year Annual Research Report
非線形超音波共鳴法を用いた非晶質固体の構造の乱れと高速イオン拡散に関する研究
Project/Area Number |
18540321
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中村 浩一 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (20284317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道廣 嘉隆 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教授 (00174061)
森賀 俊広 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教授 (90239640)
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Keywords | リチウムイオン2次電池 / LiCoO_2 / 圧電体 / LiNbO_3 / メカニカルミリング / NMR / 電気伝導 |
Research Abstract |
リチウムイオンを含む固体物質としてリチウムイオン2次電池正極材料であるLiCoO_2および圧電体LiNbO_3を用い、メカニカルミリング法によりそれらの物質の微粒子化および非晶質化を図り、それぞれ所定の時間ミリングした試料を作製した。 メカニカルミリング法による試料粉砕を行うにあたり、使用する粉砕容器および粉砕用ボールの大きさ、材質などを変え、ミリング効果の変化を調べ、粉砕効率の最適な条件の検討を行った。最終的に容器は80ccメノウ容器とZrO_2製ボール(直径5mm)のボール100gを用いてミリングを行うことで、LiCoO_2とLiNbO_3試料の構造を破壊し、非晶質化することができた。加工された試料はXRD、NMR、電気伝導度測定を行い、これらの構造と電気伝導特性の変化との関係を調べた。 LiCoO_2ではミリング時間の経過とともにLiNMRスペクトルの幅の拡がりが観測された。XRD測定の結果ではミリング時間の経過とともに、XRDの回折ピークが低角度側にシフトすることから、構造が乱れc軸方向に結晶軸が長くなったと考えられ、それによりLi核周辺の内部磁場の分布が大きくなり、NMRスペクトルが広がったと考えられる。複素インピーダンス測定による電気伝導度測定の結果、LiCoO_2ではミリング時間が増大すると電気抵抗が増大した。また、複素抵抗率の虚部に見られるデバイ型緩和のピークはミリング時間の増大とともに低周波側にシフトしており、イオンのホッピング時間が長くなることが分かった。こうした結果は、LiCoO_2ではミリングによりイオンホッピングが阻害されると考えられる。 一方、LiNbO_3ではミリング時間の増大によりNMRスペクトルは構造を持つようになることが分かった。ミリングされた試料のLi Static NMRスペクトルは幅の狭いスペクトルと幅の広いスペクトルの2つのスペクトルから成る。これは運動の早いリチウムイオンと運動の遅いリチウムイオンの2種類のイオンが存在することを示している。伝導度測定の結果は、ミリング時間の増大にともないイオン拡散の活性化エネルギーの減少を示しており、NMRスペクトルの変化と一致している。 以上のことから、メカニカルミリングがイオン拡散にあたえる効果はLicoO_2とLiNbO_3で著しく異なり、結晶構造、イオンの拡散経路など、それらの次元性を検討する必要があるかもしれない。
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