2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
富田 憲一 山形大学, 理学部, 助教授 (70290848)
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Keywords | 光物性 / 物性理論 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
モット型金属絶縁体転移が、バンド型転移と異なる点は、キャリアがバンドを部分的にしか占有していないにもかかわらず、電子間相互作用の影響で電子が局在し、低温で絶縁体に転移することである。このように金属絶縁体転移が電子間相互作用に起源を持つことから、モット絶縁体は強相関電子系であると考えられがちである。 一方で、最近の光電子分光実験によって、モット絶縁体もしくはモット転移近傍にある金属のスペクトル形状は、例えば銅酸化物とバナジウム酸化物のように、物質によって大きく異なることがわかった。このことは、モット絶縁体の中にも性格の異なるいくつかのタイプが存在することを示唆している。 平成18年度は、こうしたモット絶縁体の性質の違いが電子間相互作用の強さに起因していることを明らかにした。 用いたモデルは、電子の最隣接格子点へのトランスファーと同一格子点上の2電子間に働くオンサイトクーロン相互作用を考慮したハバードモデルで、電子数が格子点の数と等しい1/2-filled系を考えた。 平成18年度の研究では以下の点が明らかになり、Physical Review Bに掲載された。 1.オンサイトクーロン相互作用が弱くても、低温では絶縁体が基底状態であり、その光電子スペクトルはフェルミエネルギー(E_F)近傍に鋭いピークを持つ。 2.このE_F近傍のピークは1体成分からなり、電子状態も1体描像で記述される。 3.電子間相互作用が強いときは、光電子スペクトルに鋭いピークはなく、全体に幅の広い単一ピーク構造をとる。 4.このとき、光電子スペクトルは多体成分によって支配され1体成分は消失する。 5.こうしたスペクトル形状の違いから、光電子分光は電子間相互作用の強さを知るプローブになり得る。 今回の計算結果は、測定された光電子スペクトルの形状と良く対応しており、物質中の電子間相互作用の強さを理解する上で、重要な結果であると考えている。
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