2008 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体界面における電荷輸送機構の解明と機能性単分子膜による制御
Project/Area Number |
18540328
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Research Institution | 株式会社日立製作所(研究開発本部) |
Principal Investigator |
諏訪 雄二 株式会社日立製作所(研究開発本部), 基礎研究所, 主任研究員 (20216500)
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Keywords | 有機半導体 / 有機トランジスタ / 単分子膜 / ショットキーバリア / 界面 / 電気双極子 / 第一原理計算 / 相補型TFT |
Research Abstract |
本研究では有機トランジスタにおける有機半導体の電子状態を制御する方法として、単分子膜を界面に接触させる方法を検討している。前年度の研究で、ペンタセンをp型動作させるための電極上の単分子膜の効果は最大0.15V程度であり、n型動作させるための絶縁膜上の単分子膜の効果は1.3V程度であることがわかっている。今年度はまずこの差の原因を理解するために、電極上のn型動作用単分子膜の計算を行い、p型動作用と条件を揃えて比較した。その結果、n型用の効果は最大で0.84V程度と見積もられ、絶縁膜上の値より小さくなる事がわかった。金属表面の方が遮蔽効果が働いて単分子膜の作る電場の影響が小さくなりやすいためと考えられる。それでもまだ5倍以上の差があるが、その原因は主に単分子膜の材料の違いにある。 ペンタセン等の有機半導体のn型動作は、有機FETを幅広く活用するための相補型TFTの実現に不可欠である。今年度は次に、ペンタセンをn型動作させるための条件をデバイスシミュレーターを用いて検討した。電子注入障壁の空間分布を元にトンネル確率を計算した結果、電極として金を用いる限り、単分子の有無に関わらず、極端に大きなゲート電圧をかけてもn型動作は困難である事がわかった。仕事関数の大きな差が主な原因である。電極として銀を用いた場合、単分子膜無しでも80V程度のゲート電圧で電子注入が可能である。動作電圧を実用化に向けて低くするためには単分子膜が有用である。特にn型用単分子膜は効果が大きいので制御できる幅が大きい。この場合、最良の単分子膜を最大の密度で用いると効果が強すぎる程だが、効果を弱める方向の制御は種類や密度の調節で容易に実現できる。実用化のためには、コストの観点からも銀は金より望ましい。これらの結果により、有機FETの実用化のための単分子膜の有用性とその利用の方向性を示す事が出来たと考える。
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Research Products
(2 results)