2006 Fiscal Year Annual Research Report
ジオメトリー効果による異方的超伝導体の対称性および磁化機構の研究
Project/Area Number |
18540329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
天谷 健一 北海道大学, 大学院理学研究院, 助手 (70261279)
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Keywords | 異方的超伝導 / Sr_2RuO_4 / Little-Parks振動 / 磁化機構 |
Research Abstract |
強相関系における超伝導体はその多くで非s波の異方的な対形成が見られることから,精力的な研究がなされている.強電子相関物質の一つであるSr_2RuO_4は強い二次元性を持ち,そのフェルミ面の形状およびフェルミ液体的な性質はすでに詳細にわたって調べられている.また,NMRのナイトシフト測定およびμSRから,その超伝導状態では時間反転対称性の破れた2成分の秩序変数d(k)=d_0(sinak_x±isinak_y)zが縮退したスピン三重項状態が実現していることが確実視されている.さらに,超伝導秩序変数の縮退のため,強磁性の磁区構造に似たドメイン構造を作る可能性が以前から示唆されていたが,近年Polar-Kerr効果の測定によって,大きさが50-100μm程度のドメイン構造を直接観測した報告もある.本研究ではSr_2RuO_4を報告されているドメインサイズよりも小さい数10μm程度のサイズに超音波破砕機および,集束イオンビームFIB(FIB)を用いて加工してSr_2RuO_4の多重連結リングを作製し,磁場中電気抵抗測定によるリトルパークス振動の観測を試みた.Sr_2RuO_4の超伝導特性である,時間反転対称性の破れや秩序変数の縮退がリトルパークス振動に与える影響を調べることが目的である.また,試料サイズが報告されているドメインのサイズより小さいため,シングルドメイン構造になる可能性があるので,磁場印加によって秩序変数偽(k_x±ik_y)z間の縮退を解くことにより,2ドメイン間のダイナミクスに関する情報が得られる可能性も考えている. 本研究で使用したSr_2RuO_4単結晶試料(超伝導転移温度T_c=1.42K)はフローティングゾーン法によって作製した.試料の微細加工後はマイクロサンプリングプローブと呼ばれる非常に細いガラス棒でSi基板にのせ,Gaイオンビームを照射することでタングステンを層状に堆積させることができるデポジッションによって4端子電極を形成し,磁場中の電気抵抗測定を試みた.現段階では,超伝導転移の観測には成功したが,技術的な問題点もあり,2ドメイン構造に起因した現象の観測にはいたっていない.
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