2008 Fiscal Year Annual Research Report
STM/STSから見た高温超伝導体のチェッカーボード型電荷秩序と擬ギャップ
Project/Area Number |
18540332
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
桃野 直樹 Muroran Institute of Technology, 工学部, 准教授 (00261280)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 走査トンネル顕微鏡 / 電荷秩序 / 擬ギャップ / 超伝導ギャップ / 不純物効果 |
Research Abstract |
これまで本研究では、高温超伝導体における新奇なチェッカーボード状電荷秩序について走査トンネル顕微鏡・分光(STM/STS)から研究を行い、擬ギャップやストライプ秩序との関連性について報告してきた。平成20年度は、これまで主に研究を行ってきたビスマス2212系銅酸化物(Bi2212系)とは超伝導転移温度(Tc)が大きく異なるビスマス2201系銅酸化物(Bi2201系)について良質なアンダードープの単結晶試料を作製し、そのSTM/STS実験から擬ギャップとチェッカーボード型電荷秩序との関連性について調べた。その結果、チェッカーボード型電荷秩序の発達が顕著なアンダードープのBi2201系試料では、Bi2212系と同様、(1)アンチノード付近のギャップが不均一であること、(2)ノード付近(すなわち、フェルミアーク上)のギャップは非常に均一であること、が分かった。ここで重要なことは、Bi2201系の(フェルミアーク上の)均一なギャップの特徴的な大きさΔ_sが、Bi2212系と同様、超伝導転移温度(Tc)にほぼスケールすることである。この結果は、Tcが90K級のBi2212系と40K級のBi2201系の両方の銅酸化物高温超伝導体において見られたため、高温超伝導に本質的なものと考えられる。また、不純物(亜鉛)を添加したBi2212系単結晶試料を作製し、ラマン散乱実験を行った。少量の亜鉛添加により、チェッカーボード型電荷秩序の発達に関係するアンチノード付近において、超伝導ギャップの大きさは大きく抑制される。この結果は、アンチノード付近でのエネルギーギャップの大きさは不純物添加により変わらないというイットリウム系での報告と本質的に異なるものであり、大変興味深いものである
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