2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール不均一電子状態による銅酸化物超伝導体の異常物性
Project/Area Number |
18540336
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土浦 宏紀 東北大学, 大学院工学研究科, 助手 (30374961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 昭正 東北大学, 大学院工学研究科, 教授 (30361124)
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Keywords | 物性理論 / 不均一超伝導 / 銅酸化物超伝導体 |
Research Abstract |
本研究の目的は,銅酸化物超伝導体(以下では「銅酸化物」と記す)に内在するナノスケールの化学的不均一性が銅・酸素面の電子状態等に及ぼす影響を数値的に明らかにし,これまでに「異常」だと見なされてきた「銅酸化物」の諸物性のうち真に「異常」であるものと不均一性起源の「見かけの異常」であるものを弁別することである.今年度は以下の3項目に関して研究を行った. 1.不均一超伝導状態を再現するモデルの選択: t-Jモデルをもとにして,STM/S実験で見られる不均一なスペクトルをよく再現する微視的モデルを模索・構築した.銅・酸素面外に存在する化学的乱れの効果は,超交換相互作用,あるいは次近接サイト間のキャリア遷移振幅の空間的変調として表されることを見出した. 2.不均一超伝導状態における磁束芯の電子状態: 上記のモデルを用いて,不均一超伝導状態に磁場が印加された状況を計算した.特に磁束芯が超伝導ギャップの大きな領域にトラップされた場合,最適ドープ付近でもd-density-wave (DDW)状態が容易に誘起されることが分かった.DDW状態が生じると,磁束芯における準粒子スペクトルは磁場のない状況でのd波超伝導状態によく似たものとなる.したがって,磁束芯で観測された奇妙なSTSスペクトルを理解するうえで,不均一超伝導状態は無視し得ないことが明らかになった. 3.長周期電荷秩序状態実現の可能性: 最近STM/S実験で見出された,4×4型と呼ばれる長周期電荷秩序状態が実現する可能性を調べた.ここでは長距離のキャリア遷移振幅を持つ拡張型t-Jモデルを用い,電荷秩序,反強磁性秩序,DDW,そして超伝導の4種のオーダーパラメーターの競合する状況で計算を実行した.乱れも磁場もない状況では,4×4型電荷秩序状態は現われず,その原因が4×4状態の電荷分布がもたらすエネルギー損失のためであることを明らかにした.
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Research Products
(2 results)