2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540341
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
押川 正毅 The University of Tokyo, 物性研究所, 教授 (50262043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堺 和光 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10397028)
宮下 精二 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10143372)
太田 仁 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (70194173)
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Keywords | 磁性 / 強相関電子系 / 物性理論 / 数理物理 / 計算物理 / 磁気共鳴 / 量子スピン系 / 量子ダイナミクス |
Research Abstract |
本年度は、準古典的な(スピン量子数Sの大きい)スピン対のESRの理論を非線形シグマ模型に基づいて構築した。まず、スピン対はスピン量子数の大きい極限で、ゼロ次元の非線形シグマ模型にマップされる。非線形シグマ模型の古典的な運動方程式を数値的に高精度で解くアルゴリズムを確立したので、これをゼロ次元の非線形シグマ模型に適用した。特に、異方性として、交替磁場すなわち2つのスピンに対して向きが反対となるような磁場を加えた場合のESRスペクトルを調べた。 その結果、この一見単純なモデルが非常に豊富なESRスペクトルの変化を示すことがわかった。まず、高温領域では交替磁場の影響は小さく、ほぼ常磁性的な共鳴が見られる。しかし、温度を低下させるにつれ、常磁性共鳴のピークは次第に消失し、複数の新しいピークが現れる。これらの共鳴吸収ピークの同定を、数値計算の結果と解析的手法を比較対照することで行った。古典論の範囲で低温の極限では、交替磁場によって決定される基底状態のまわりの微小振動(スピン波)が支配的となる。一方、中間的な温度領域では、非線形効果によるピークもみられた。定性的な全体の傾向は、スピン1/2の量子スピン鎖で見られるクロスオーバーにも類似している。 一方、厳密対角化によって量子スピン対のESRスペクトルも求めた。スピン量子数Sが大きい場合、上で述べた古典系の計算と良く一致するが、ギャップより低い温度では量子性が発現して古典系とは異なるふるまいを示す。この量子陛は、温度または磁場のどちらかがギャップより大きい場合には消失する。 このように、スピン対というゼロ次元の非常に簡単な系でも非自明なESRスペクトルの温度変化が見られることは意外な発見であり、最近活発に研究されている分子磁性体への応用も期待される。また、当初からの目標である1次元スピンギャップ系のESR理論の構築にも有用な出発点を与える。
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