2007 Fiscal Year Annual Research Report
時間分割中性子散乱法による非平衡スピン系の実時間追跡
Project/Area Number |
18540357
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
元屋 清一郎 Tokyo University of Science, 理工学部, 教授 (60114683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室 裕司 東京理科大学, 理工学部, 助教 (50385530)
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Keywords | スピングラス / 磁性 / 中性子散乱 / 時間分割測定 / 非平衡系 |
Research Abstract |
これまでの研究で高濃度スピングラスに見られるリエントラント転移やスピン波励起の異常には有限距離の強磁性的相関を持つ磁気クラスターの存在が本質的である事、またこれと強磁性ネットワークの共存状態の性質としてこれらの異常なふるまいが理解される事を示してきた。更にスピングラスの特性であるスローダイナミックスにも磁気クラスターが重要な役割を担っていることを時間分割中性子小角散乱法で示した。更に、マクロ測定に基づく磁気相図に反して反強磁性的相関の磁気クラスターをも含む3種の異なる磁気的領域が共存する物質系を見いだした。これらの異なる磁気相関を持つ領域の共存状態とそれぞれの領域内での磁気励起を明らかにし、さらに反強磁性クラスターの時間発展を3軸中性子分光器による時間分割測定によって追跡することを計画している。これらの結果とこれまでの時間分割中性子小角散乱実験による強磁性的相関領域に関する結果を合わせて複数の磁気的領域の存在形態とその時間発展を捉え、これまで行なってきた一連の研究の総まとめとして異なる磁気相関の共存下におけるスローダイナミックスの全貌解明を目指している。本年度は偏極中性子散乱実験により強磁性・反強磁性相関の空間的共存状態とそれらの外部磁場依存性を観測した。昨年度行った非偏極中性子による実験結果 1.強磁性・反強磁性クラスターは空間的に独立に共存している。 2.外部磁場が増加するにつれて強磁性的クラスターのうち大きなサイズのものが強磁性ネットワークに吸収されて消滅し、平均サイズの小さいクラスターのみが残る。 を補強する結果に加えて、反強磁性相関をもつクラスターの構造(伝搬ベクトル、スピン方向、相関長)が決定された。
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