2006 Fiscal Year Annual Research Report
スピン1重項状態と反強磁性秩序状態が共存する量子スピン系の研究
Project/Area Number |
18540359
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
長谷 正司 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームセンター, 主幹研究員 (40281654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 清 独立行政法人物質・材料研究機構, 光触媒材料センター, 主幹研究員 (90343855)
端 健二郎 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, 主任研究員 (00321795)
黒江 晴彦 学校法人上智大学, 理工学部, 助手 (40296885)
関根 智幸 学校法人上智大学, 理工学部, 教授 (60110722)
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Keywords | 磁性 / 量子スピン系 / スピン1重項状態 / 反強磁性秩序状態 / ギャップ / Cu_2CdB_2O_6 / 帯磁率 / 磁化 |
Research Abstract |
スピン1重項状態と反強磁性秩序状態が共存する量子スピン系の研究として、主として、Cu_2CdB_2O_6の磁性の研究に取り組んでいる。進展状況は以下の通りである。NMRとNQR測定を行うために、Cu_2CdB_2O_6粉末試料の改善に取り組んでいる。作製条件を検討することにより、試料の改善は見られたが、NMRとNQR測定を行えるだけの品質の試料は、まだ得られていない。配勾試料の作製には成功した。ただし、もう少し改善できる余地があるので、更に、配勾試料の作製には取り組む予定である。ラマン散乱測定に関しては、それを行えるだけの大きさを持つ単結晶試料は得られなかった。大きな単結晶試料の作製を行っていく必要がある。 上記の量子スピン系の普遍的性質を追及するために、関連物質の研究も行った。具体的には、Cu_3(P_2O_60H)_2の磁性を研究した。この物質では、スピンを持つCuサイトは2つある(Cu1とCu2)。結晶構造から、2つのCu2を結ぶJ_1相互作用とCu1とCu2を結ぶJ_2相互作用が主要な相互作用であり、結果として、J_1-J_2-J_2というパターンを持つスピン1/2の3倍周期鎖が、この物質の磁性を決めると期待される。実際、帯磁率の温度依存性と磁化の磁場依存性は、J_1=95K, J_2=28Kの場合の量子モンテカルロシミュレーションを用いて得られた計算結果とほぼ一致する。特筆すべき結果は、磁化の磁場依存性に現れる1/3磁化プラトーである。これは、Cu2スピンがJ_1相互作用で反強磁性ダイマーに似た、ほぼ非磁性な状態を作り、残りのCu1スピン(数的には全体の1/3)が、ほぼ飽和するために現れる。Cu1スピン間には、Cu2ダイマーを媒介とした、弱い反強磁性相互作用が働くので、充分低温では、反強磁性秩序を起こすことが期待できる。中性子散乱を行うための重水素化した試料の作製にも成功した。
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