2007 Fiscal Year Annual Research Report
スピン1重項状態と反強磁性秩序状態が共存する量子スピン系の研究
Project/Area Number |
18540359
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
長谷 正司 National Institute for Materials Science, 量子ビームセンター, 主幹研究員 (40281654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 清 独立行政法人物質・材料研究機構, 光触媒材料センター, 主幹研究員 (90343855)
端 健二郎 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, 主任研究員 (00321795)
黒江 晴彦 上智大学, 理工学部, 助教 (40296885)
関根 智幸 上智大学, 理工学部, 教授 (60110722)
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Keywords | 磁性 / 量子スピン系 / スピン1重項状態 / 反強磁性秩序状態 / ギャップ / Cu_2CdB_2O_6 / 帯磁率 / 磁化 |
Research Abstract |
スピン1重項状態と反強磁性秩序状態が共存する量子スピン系の研究として、主として、Cu_2CdB_2O_6の研究に取り組んでいる。NMRとNQR測定を行うために、Cu_2CdB_2O_6粉末試料の改善に取り組んでいるが、作製条件を検討することにより、試料の改善は見られた。ラマン散乱測定に関しては、それを行えるだけの大きさを持つ単結晶試料は得られなかった。大きな単結晶試料の作製を行っていく必要がある。Cuの1部をZnに置換した試料の磁性の研究では、Zn量の増加に伴い、反強磁性転移温度が下がるが、他の低次元反強磁性体と比較して、その下がり方が小さいことが分かった。このことから、反強磁性秩序を担うCu2のスピン系は2本脚梯子であることが分かった。 上記の量子スピン系の普遍的性質を追及するために、関連物質であるCu_3(P_2O_6OD)_2とCu_3Mo_2O_9の磁性を研究した。Cu_3(P_2O_6OD)_2では、2つのCuサイトがあり、2つのCu2を結ぶJ_1相互作用とCu1とCu2を結ぶJ_2相互作用があり、J_1-J_2-J_2というパターンを持つ3倍周期鎖が形成される。磁化曲線には1/3磁化プラトーが現れるが、これは、Cu2スピンがJ_1相互作用で反強磁性ダイマーに似た、ほぼ非磁性な状態を作り、残りのCu1スピン(数的には全体の1/3)が、ほぼ飽和するために現れる。中性子散乱を行い、磁化プラトーを生み出すギャップの観測に成功した。Cu_3Mo_2O_9は3種類のCuサイトを持ち、Cu1ス「ピンが反強磁性鎖を、Cu2とCu3スピンが反強磁性ダイマーを作る。温度を下げると、7.9KでCu1スピンの鎖に平行成分のみが反強磁性秩序状態を示し、2.5Kで初めて垂直成分も秩序化するという特異な性質を発見した。フラストレーションによるものと推測している。また、Zn置換により、垂直成分の秩序状態のみが消えることも見出した。
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