2008 Fiscal Year Annual Research Report
スピン1重項状態と反強磁性秩序状態が共存する量子スピン系の研究
Project/Area Number |
18540359
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
長谷 正司 National Institute for Materials Science, 量子ビームセンター, 主席研究員 (40281654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 清 独立行政法人物質・材料研究機構, 光触媒材料センター, 主幹研究員 (90343855)
端 健二郎 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, 主任研究員 (00321795)
黒江 晴彦 学校法人上智大学, 理工学部, 助教 (40296885)
関根 智幸 学校法人上智大学, 理工学部, 教授 (60110722)
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Keywords | 磁性 / 量子スピン系 / スピン1重項状態 / 反強磁性秩序状態 / ギャップ / Cu_2CdB_2O_6 / 帯磁率 / 磁化 |
Research Abstract |
Cu_2CdB_2O_6には、スピン1/2を担う2種類のCu^<2+>イオンサイト(Cu1とCu2)が存在する。2つのCu1サイト上のスピンがJ_1交換相互作用で反強磁性ダイマーを形成し、Cu2サイト上のスピンがJ_3交換相互作用で反強磁性鎖を形成し、J_2交換相互作用がCu1とCu2スピンを反強磁性的に結合させているというモデルを考えた。Cu_2CdB_2O_6は1/2磁化プラトーと反強磁性秩序という性質を低温で示すが、J_1=160K,J_2=38.8K,J_3=9.7Kとすると磁化の結果を定量的に説明できる。本モデルでは、Cu1スピンがほぼスピン1重項(非磁性)状態で、Cu2スピンが反強磁性秩序状態を形成すると考えられる。Cu1とCu2サイト間距離は0.322nmと短く、J_2相互作用も無視できないにも関わらず、2つの大きく異なる状態が共存する。 平成20年度は、反強磁性秩序状態が現れる低温での磁気構造の決定に成功した。当初の予想とは異なり、Cu1とCu2ともに大きな磁気モーメント(0.448μBと0.827μB)を持つことが分かった。磁気モーメントの配列から、J_1が反強磁性、J_2とJ_3が強磁性であることも分かった。J_1=264K,J_2=-143K,J_3=-4.95Kとすると、反強磁性転移温度以上の磁化の結果を定量的に説明できることが分かった。J_3は他の2つと比べてかなり小さいので、無視すると、Cu_2CdB_2O_6のスピン系は、Cu2スピン-J_2-Cu1スピン-J_1-Cu1スピン-J_2-Cu2スピンという4スピン系に近似できる。J_1=264K,J_2=-143Kという値について、4スピン系の固有状態を計算した。1/2磁化プラトーが現れる磁場領域の固有状態は、Cu1スピンペアの1重項状態とCu2スピンペアの3重項状態の積で表される項と、Cu1スピンペアの3重項状態とCu2スピンペアの1重項状態の積で表される項の足し合わせであることが分かった。Cu1とCu2スピンには定性的な違いが無いことを意味し、ともに大きな磁気モーメントを持つことが理解できる。
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Research Products
(10 results)