2006 Fiscal Year Annual Research Report
プルトニウム金属およびプルトニウム化合物の磁性と超伝導の微視的理論研究
Project/Area Number |
18540361
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
堀田 貴嗣 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主幹 (00262163)
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Keywords | δ-Pu / 磁性 / 5f電子 / 遍歴 / 局在 / j-j結合描像 / 軌道縮退ハバードモデル / 四極子 |
Research Abstract |
Pu金属のδ相(面心立方晶)においては、負の熱膨張係数やバンド計算結果から、5f電子の局在性が強く、磁気的であると考えられてきた。しかし、Gaを少量ドープして低温まで面心立方構造を保ったδ-Puに対するμSR測定によると、磁気モーメントが存在したとしても10^<-3>μ_B以下であり、磁気相は否定されつつある。そこで本年度は、δ-Puで磁性が発現しない理由を多極子自由度の競合の観点から研究した。 本研究代表者はこれまでに、f電子系に対して、j-j結合描像に基づく軌道縮退ハバード模型の構成法を開発してきたが、これをPu金属に適用した。得られたモデルは、f電子遍歴項、f電子結晶場項、クーロン相互作用項から成る。面心立方格子の最小単位である4サイトの正三角錐上で軌道縮退ハバード模型をハウスホルダー法によって対角化し、どのような基底状態が実現しているかを調べた。そして、多極子感受率を計算し、その温度依存性や相互作用依存性を検討したが、最適な多極子状態の決定に注意をした。具体的には、ランク3までの多極子成分(双極子3成分、四極子5成分、八極子7成分の合計15成分)とサイトに依存する多極子感受率を要素にもつ行列を計算し、それを対角化した。最大固有値をもつ状態が、最適な多極子状態を表すことになる。このような計算を、相互作用や温度を変えながら繰り返し実行し、相互作用によって最適多極子感受率が増強されるか否かを詳細に調べた。その結果、妥当なパラメーター領域で、非磁性の電荷四極子揺らぎが増強され、磁気双極子や磁気八極子の揺らぎは抑制されることがわかった。これは、δ-Puにおいて磁性が観測されないことと矛盾しない。今後、δ-Puに関する実験結果との比較・検討を行う必要があるが、四極子揺らぎが優勢な相であるすると、圧力印加によって磁気モーメントが誘起されることを予言しており、実験による検証が可能となる。
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