2007 Fiscal Year Annual Research Report
プルトニウム金属およびプルトニウム化合物の磁性と超伝導の微視的理論研究
Project/Area Number |
18540361
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
堀田 貴嗣 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 准教授 (00262163)
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Keywords | δ-Pu / 磁性 / 5f電子 / 遍歴 / 局在 / j-j結合描像 / 軌道縮退ハバードモデル / 多極子 |
Research Abstract |
δ-Puで磁性が発現しない理由を多極子自由度の競合の観点から研究し、その成果を査読付き雑誌に発表した。まず、j-j結合描像に基づいて軌道縮退ババード模型を構成し、それを面心立方格子の最小単位である4サイトの正三角錐で厳密対角化法によって解析した。電子の跳び移り積分と結晶場エネルギーの相図において、現実的なパラメーター領域では、四極子モーメントが活性な非磁性状態になっていることを見出した。次に、サイト数を増やして場の量子論的な計算を行うか、シングルサイト近似によって伝導電子と結合させたモデルを数値繰り込み群法によって解析するか、2つの研究の方向性がある。今年度は、不純物サイトでクーロン相互作用、スピン軌道相互作用、結晶場ポテンシャルを考慮した軌道縮退アンダーソンモデルを考え、Pu^<3+>イオンを想定してf電子が5個の場合にこのモデルを数値繰り込み群法によって解析した。その結果、Γ_8四重項が基底状態の場合は四極子および八極子揺らぎが、Γ_7二重項が基底状態の場合は双極子揺らぎが低温において支配的になることを見出した。4サイトの結果ともコンシステントであるが、非磁性の多極子状態発現には結晶場ポテンシャルの影響が大きいと考えられる。また、今後の研究に向けて、古典電磁気学における多極子展開のアナロジーを利用して、f電子の多極子を一体の電荷・スピン演算子として表現するための一般論を展開し、線形応答理論に基づく多極子感受率の計算から多極子状態を曖昧さなしに決定するスキームを完成させた。これにより、複数f電子がある場合の多極子状態の研究、特に多極子揺らぎによる超伝導の研究が容易になると予想される。
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