2008 Fiscal Year Annual Research Report
プルトニウム金属およびプルトニウム化合物の磁性と超伝導の微視的理論研究
Project/Area Number |
18540361
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
堀田 貴嗣 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 准教授 (00262163)
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Keywords | δ-Pu / 磁性 / 5f電子 / 遍歴 / 局在 / j-j結合描像 / 軌道縮退ハバードモデル / 多極子 |
Research Abstract |
δ型プルトニウム金属およびプルトニウム系超伝導体PuCoGa_5においては、プルトニウムイオンは3価であると考えられている。3価のブルトニウムイオンは5個のf電子を有するので、今年度は、f^5電子状態に起因する物性の研究を集中的に行った。特に、f電子を5個有する系における近藤効果に関して、磁場に鈍感な重い電子状態が発現する機構として多極子近藤効果を提唱した。アイデアは単純で、磁場が直接結合するのは双極子モーメントであり、それ以上の高次の多極子モーメントは磁場とは直接結合せず、双極子モーメントとの重なりを通して磁場とは間接的に結合するので、四極子以上の多極子モーメントに関する近藤効果、すなわち多極子近藤効果は一般に、磁場にはあまり影響されないと予想される。これを確かめるために、軌道縮退アンダーソンモデルに基づいて、磁場下で多極子感受率、エントロピー、比熱を計算し、多極子モーメントに関する近藤効果が磁場によってどのように変化するかを詳細に調べた。 具体的には、7軌道アンダーソン模型を数値繰り込み群法によって解析し、電子比熱係数γの磁場依存性を調べた。γが磁場に全く依存しないという結果は得られなかったが、10テスラ以上の高磁場側ではγは磁場に殆ど依存しないことを朗らかにした。さらに、非調和フォノンとの結合を加えたホルスタインアンダーソン模型も同様の手法で解析し、磁場に鈍感な重い電子状態の理解を深めた。 多極子あるいはフォノン自由度による近藤効果の研究が後半の中心となったため、当初予定していた超伝導に関する研究は十分に行うことができなかったが、軌道秩序相近傍に出現する新奇な超伝導の可能性について、乱雑位相近似の範囲で一定の成果を得ることができ、学会発表を行った。今後、論文にまとめて出版する予定である。
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