2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540362
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
樹神 克明 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (10313115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
社本 慎一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 研究主幹 (90235698)
瀧川 仁 東京大学, 物性研究所, 教授 (10179575)
田中 秀吉 独立行政法人通信総合研究機構, 関西先端研究センター, 主任研究員 (40284608)
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Keywords | 強相関電子系 / 磁性 / ナノチューブ、フラーレン / 物性実験 |
Research Abstract |
ナノ粒子はその結晶周期性がナノスケールにとどまっているために、X線や中性子の回折ピークがブロードになる。そのため従来バルク試料で用いられている回折パターンを用いた構造解析手法からその結晶構造を決定するのは困難である。そこで近年では対相関関数を用いた構造解析手法(PDF解析)によるナノ粒子の構造決定が試みられている。この手法では回折データをフーリエ変換することによって、対相関関数(PDF)G(r)を導出する。G(r)は動径分布関数R(r)(ある原子について距離rの位置にある原子の数をあらわす)と原子数密度p_oを用いてG(r)=R(r)/r-4πrp_oで関係づけられる。このようにして波数空間の情報である回折パターンを実空間の情報であるG(r)を用いることによって、ナノ粒子の構造解析が可能になると考えられてきた。 しかし我々はこの手法をそのまま用いただけでは、ナノ粒子の正確な構造解析はできないことを指摘した。その理由は、実際の測定で観測可能な相関距離は数十nmでナノ粒子のサイズと同程度であり、このような場合粒子の有限性はG(r)に対しそのサイズおよび形状に依存する減衰効果を与えるからである。従来のPDF解析ではこのような効果を考慮していないので、これをそのままナノ粒子に適用することは妥当ではない。そこで我々は回折理論から、有限サイズ効果を補正したG(r)の表式を求め、さらにそこで現れる補正因子が小角散乱で得られる散乱関数と関係していることを示した。次に様々な形状のナノ粒子に対しての補正因子を計算した。さらにTiO_2ナノ粒子の中性子散乱から得られたG(r)に対して、補正因子を用いたG(r)を計算し、これが実験結果とよく一致することを示した。これによってナノ粒子の正確な構造解析が初めて可能になったと言える。
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