2009 Fiscal Year Annual Research Report
複雑系における過冷却液体およびガラス転移の統計物理学的研究
Project/Area Number |
18540363
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳山 道夫 Tohoku University, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (40175477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 弥生 流体科学研究所, 助教 (20301814)
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Keywords | ガラス転移 / 過冷却液体 / 普遍性 / 空間不均一構造 / 超寿命緩和現象 / 長時間自己拡散係数 / コロイド分散系 / ガラス形成物質 |
Research Abstract |
複雑な多成分ガラス形成物質におけるガラス転移点近傍での普遍性の存在を検証することを目的として,研究実施計画に沿って研究を遂行した.様々なガラス形成物質系の実験データやシミュレーション結果を研究代表者が2006年に提案した平均場理論に基づく統一的立場から分析し,ガフス転移点近傍で次の二つの晋遍性が成立つことを見出した. 普遍性(1):異なる体系において,それぞれの長時間自己拡散係数が同じ値を持つ場合は,それらの系のダイナミクス(例えば,平均二乗変位や平均四乗変位など)は全く同じである. これにより,体系に依らず特性時間や特性長も長時間自己拡散係数同じ関数に従うことが示唆され,実際,様々な系で確かめられている. 普遍性(2):ある原子の長時間拡散係数は,その原子がどのような多成分ガラス形成物質系に属していても,同じ普遍関数(マスタ-カーブ)に従う. これにより,一旦,ある原子に対して長時間自己拡散係数が測定されたら,他の系に属する同じ原子の自己拡散係数は,単に一点の測定データが有れば,容易に推測出来ることを示している.測定が困難な複雑系に対しては,簡単な系からの情報で拡散係数が推測出来るので,この普遍性の発見は実験やシミュレーションに多大な便宜を提供するものと期待される.このように,ガラス転移点近傍でのガラス形成物質に置ける普偏性の実証は,様々な体系に対して当初の研究実施計画通り達成されたものと考える.
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