2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540371
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 尚男 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 教授 (90222223)
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Keywords | ロングタイムテール / 粉体 / せん断 / モード結合理論 / 速度相関 / ガラス転移 / 反発係数 / 揺動散逸定理 |
Research Abstract |
本年度は2件の印刷された論文の他に、3篇のプレプリントを投稿している。更に国際会議の会議録として4篇のある程度まとまった論文(うち一つは招待論文)を投稿している。論文として出版したテーマは自由冷却粉体ガスのロングタイムテールと、せん断濃厚粉体へのモード結合理論の適用である。前者は粉体ガスの速度相関やストレスの相関のロングタイムテールを初めて理論的に論じると共にエネルギー流の相関では指数関数減衰になることを示したものである。後者はガラス転移等に用いられるモード結合理論をせん断粉体系に適用した注目すべき論文であった。その他、投稿した論文はせん断ガス系のカレントの相関関数のロングタイムテールとその輸送係数への影響を統一的に論じたもの、ガラス転移へ揺動散逸定理を充たす場の理論の適用によってモード結合理論の位置づけを明らかにした論文、それからナノクラスターの衝突で反発係数が1を超えることを示した論文である。最後の論文に関連して、更に衝突への弱い引力の効果を調べた論文を7月のロシアの国際会議での招待論文として発表する予定である。これらの論文は何れもオーソドックスな運動論に基づき非平衡統計力学に新しい観点をもたらしたことで注目される。またロングタイムテールの論文は主として稀薄粒子系を念頭においていたが、モード結合理論のようにガラス転移に適用できるような非常に濃厚な系に対する理論まで統一的に論じ得る機運が出てきたのは当初の計画にもない思いがけない進展である。
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