Research Abstract |
1.多次元量子系における動的トンネル効果と動的局在 カオスの発生する非可積分系における動的局在現象と動的トンネル効果との関係を,前年度に引き続き調べた.今年度は以下の2点,(1)3次元結合振動子系における動的トンネル効果の異常増大,(2)解析性をもたない系における回折効果とトンネル効果,に焦点を当て解析を行った.(1)に関しては,前年度 行った2次元結合系と比較し,3次元系においては異常トンネル効果がより強調されて現れることが明らかになった.これにより,動的局在・非局在転移によって誘発されたトンネル遷移確率の異常増大,という,我々が当立てた仮説の強い裏付けが得られた.また,(2)に関しては,解析性の崩れた系においては,混合位相空間に見られる通常の動的トンネル効果とはその発生機構を異にする「回折効果」がトーラズ・カオス間の過程に支配的になることを明らかにした 2.馬蹄極限のおける量子エノン写像の鞍点寄与の時間依存性 エノン写像はカオスを示す最も単純な2次元写像のひとつである.写像が多項式で与えられることから,対応する量子論の時間発展核に寄与する鞍点解)の寄与・非寄与問題を解析するためのミニマムなモデルとしても有効である.特に,一回写像の時間発展核は,いわゆるエアリ積分そのものであり,光学の回折現象をその初等カタストロフの観点から分類した,いわゆる回折カタネトロフの標準型とも関連が深い.今年度は,馬蹄極限のおける量子エノン写像のいわゆるストークス幾何学を詳しく解析しだ結果,その寄与数が時間に対して高々代数的にしか増大しないことがわかった.また,その厳密な証明を与えた.それに対し,回折カタストロフの拡張としで多項式作用をもつ1重積分を考え,多項式の次数がエノン写像の鞍点解と同じ,指数関数的に増大するような比較設定をした場合には,得られる寄与鞍点解の個数は指数関数的に増大することか明らかになった.
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