2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540381
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
松川 宏 Aoyama Gakuin University, 理工学部, 教授 (20192750)
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Keywords | ナルトライボロジー / 走査プローブ顕微鏡 / トライボロジー / ナルチューブ・フラーレン / 表面・界面物性 |
Research Abstract |
固体間の滑り摩擦は最も身近な物理現象の一つであり古くから研究が行われてきたが、多くの基本的な問題が未解決のまま残されている。近年では表面の精密な制御が可能となり、摩擦力顕微鏡など新たな実験手段が開発され、ミクロ・ナノスケールの摩擦の研究が始まっている。しかし、そのようなスケールから出発し、マクロスケールの摩擦を理解することは未だなされていない。階層構造をなす異なるスケールの界面摩擦を、それぞれのスケールに適した有効モデルを構築しそれを解析することを目的として研究を行ってきた。具体的成果を以下に記す。 1、ナノ潤滑剤層の摩擦の計算機実験 古典分子動力学法により数分子層の潤滑剤の振る舞いを調べ、摩擦力が潤滑剤分子と基盤との相互作用の強さに対して非単調に変化すること、これは潤滑剤層の構造変化によることを明らかにした。潤滑剤分子の設計の観点からも興味深い結果である。 2、粉体の摩擦と地震 地震は滑り面間に介在物のある摩擦現象の一種であり、その振る舞いを理解する上で粉体系の摩擦が良いモデル系となる。アルミナボールを用いた粉体摩擦の実験を行い、スリップの大きさの分布が冪乗則にのることを見いだした。この系は潤滑のモデルともなり、得られた結果はその文脈でも興味深い。 3、摩擦を利用した運動の解析 空間的に対称な基板上の粒子鎖モデルにおいて、粒子間相互作用の自然長を時間空間的に振動させることにより、方向を持った運動が可能となること、その方向は初期条件などには依らないが、振動の周期などのパラメーターに依存すること、断熱運動および準断熱運動状態では時間平均した運動の速度はある基本速度の整数倍の値に量子化され、そのため広いパラメータ領域で速度ロッキングが起こること、等を明らかにした。ナノマシーンの運動機構としても重要な結果であろう。
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