2007 Fiscal Year Annual Research Report
放出電子マルチコインシデンス測定による多重光電離過程ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
18540399
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
伊藤 健二 High Energy Accelerator Research Organization, 物質構造科学研究所, 教授 (60151502)
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Keywords | 光電離過程 / 多重電離過程 / コインシデンス / 飛行時間 / 真空紫外・軟X線 |
Research Abstract |
平成18年度に完成した電子に対して高い捕集効率を持つ磁気ボトル付き飛行時間型電子エネルギー分析器を用いて多くの原子分子系に応用し、その多重電離過程について様々な成果を得ることができた。Ne原子では、外殻の2電子が放出される二重電離過程を詳細に調べることにより、終状態まで分離したNe原子の2価イオン生成断面積を広いエネルギー範囲にわたって求めた。この結果は、二重電離過程の理論的取り扱いに一つの指針を提供した。Xe原子では、4p光電子の異常な振る舞いに着目し、そのしきいエネルギー近辺で二重電離過程を調べたところ、4d内殻軌道から2電子が放出された2価イオン生成の増大が観測された。測定した2電子のエネルギー相関スペクトルから2価イオンの終状態および生成過程を詳細に調べた結果、4pの1重電離過程で生成したXe4p^<-1>状態の非常に早いSuper-Coster-Kronig過程がXe4d^<-2>生成に重要な寄与をしていることが判明した。このことは、30年以上前に理論的に予測されていたが、本研究により初めて実証できた。さらに、CO分子の内殻電離に伴い外殻電子が一緒に放出される二重電離過程の研究を行った。生成する終状態の同定を理論計算と付き合わせることにより、内殻ホールが生成される原子の近傍の外殻電子が一緒に放出される確率が高いことを示すことができた。このような結果は、高い捕集効率を有する電子エネルギー分析器によるものである。またこれらの研究成果は、すべてメージャーな学術雑誌に発表した。また、本申請により製作した光チョッパーが平成19年度に完成し、パルス間隔を10μ秒まで広げることから、曖昧さのない電子エネルギー分光が可能となってきた。これを利用して、三重電離過程の研究を進めた。これらの結果は現在論文にまとめているところである。
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