2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540403
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥薗 透 東京大学, 大学院工学系研究科, 特任講師 (10314725)
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Keywords | 乾燥過程 / スキン層 / ゲル化 / 蒸発 / 高分子溶液 / 非平衡ソフトマター |
Research Abstract |
高分子溶液の蒸発過程の物理的理解は、ソフトマターの非平衡現象を対象とする基礎科学的観点のみならず、インクジェット技術を利用した工学的な応用において重要である。特に、溶媒の蒸発に伴う自由表面付近でのスキン層(ゲル状の皮膜)の形成は、表面のバックリング不安定性と関係していると考えられ、乾燥後の残留物の形状に影響を及し、実際的な工学的プロセスにおいて、その制御が望まれている。そこで、本研究では、大変形を伴う膜の非平衡ダイナミクスの典型的かつ重要な要素として、高分子溶液の蒸発過程におけるスキン層の形成ついての理論および数値シミュレーションによる研究を行った。 問題を簡単化するために、平らな固体基板上の高分子溶液の蒸発過程を考え、高分子の協同拡散の概念を援用して、1次元の拡散モデルを提案した。このモデルでは、高分子の濃度がある値(ゲル化濃度)に達するとゲル化し、協同拡散係数が急激に大きくなり、スキン層が形成されるという描像に基づいている。また、溶媒の蒸発による効果は自由表面での境界条件によって考慮され、モデル方程式は移動境界を伴った拡散方程式となる。このモデルに基づいた理論解析および数値シミュレーションの結果、スキン層の形成過程は、蒸発速度、拡散係数、および系の特徴的長さによって定義された無次元数(ペクレ数)によって特徴付けられることが示された。また、ペクレ数、ゲル化濃度、および高分子の初期濃度をパラメーターとして、スキン層の形成条件を表す式が得られた。これらの結果は、基板上の高分子液滴の乾燥過程の実験結果と定性的に一致する。 今後はこのモデルを2または3次元に拡張し、スキン層の弾性を考慮し、さらに潤滑近似を用いて流体力学的自由度と結合したモデルを構築する予定である。
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