2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540403
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥薗 透 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特任講師 (10314725)
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Keywords | 膜 / ソフトマター / 非平衡 / ダイナミクス |
Research Abstract |
本研究は、非平衡条件下での膜の大変形過程のダイナミクスを理解するために、流体中の膜の運動を記述する一般的な枠組みを構築し、それに基づいた数値モデルの確立を目的とする。本年度は、非平衡状態における粘弾性膜のダイナミクスの典型的なプロセスとして、高分子溶液の溶媒蒸発に伴う皮膜形成過程のダイナミクスを取り上げ、以下のような研究を行った。 高分子溶液乾燥過程のダイナミクスにおいて、自由表面における溶媒の蒸発速度に関する知見は重要である。特に、溶媒の蒸発速度が速く、自由表面にゲル状の膜が形成される場合には、ゲル化に伴ってあらわれる弾性効果が蒸発速度に影響を及ぼすと考えられる。そこで我々は、ゲル化による弾性効果を考慮した理論的なモデルを構築し、蒸発速度の理論的な表式を得た。それによれば、自由表面での高分子濃度がゲル化濃度をこえると、蒸発速度が急激に減少することが示される。このことは、実験的にも示唆されていることである。このモデルでは、蒸発速度と同時に、溶液中の高分子の協同拡散係数の高分子濃度依存性についても知ることができ、ゲル化濃度をこえると協同拡散係数は急激に増加することが示される。 2次元あるいは3次元の系では、乾燥過程における流れ場の影響を考慮する必要がある。我々は、潤滑近似を用いて流れ場の影響を考慮した2次元のモデルを構築し、隔壁をもった固体基板上の高分子溶液の乾燥ダイナミクスに関する数値シミュレーションを行った。その結果、蒸発速度が流体の速度に比べて遅い場合には、隔壁付近で濃度が高くなり、蒸発速度が速い場合には、自由表面付近で濃度が高くなることがわかった。
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