2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540403
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥薗 透 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特任講師 (10314725)
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Keywords | 膜膜 / ソフトマター / 非平衡 / ダイナミクス |
Research Abstract |
本研究は、非平衡条件下での膜の大変形過程のダイナミクスを理解するために、流体中の膜の運動を記述する一般的な枠組みを構築し、それに基づいた数値モデルの確立を目的とする。本年度は、非平衡状態における膜形成ダイナミクスの典型として、高分子溶液の溶媒蒸発によって誘起される流れ場およびゲル化のダイナミクスを取り上げ、以下のような研究を行った 高分子溶液乾燥過程のダイナミクスにおいて、乾燥後の残留物(ゲル膜)の形状を決める物理的因子を明らかにすることはインクジェット印刷技術の応用において重要である。溶媒の蒸発速度が溶質の拡散速度に比べて遅い場合には、接触線の固定によって誘起される流れ場の影響が現象の支配的要因となる。本研究では、溶媒と溶質に関する保存則を基礎として、最も遅いモードのみを考慮する(キャピラリー数がゼロの極限に対応する)ことにより流れ場の影響を取り入れ、かつゲル化も考慮した簡単なモデルを構築し、それを理論的に解析することによっておもに以下のような結果を得た (1)高分子液滴の中央での(自由表面の)高さは時間に線形に減少し、そこでの高分子濃度は高さの逆べきで増加する (2)乾燥後の膜の形状を決める因子は初期の高さ(体積)および高分子の初期濃度とゲル化濃度の比である。 (3)乾燥後の膜形状は、上記の初期パラメータによっていくつかの形に分かれる。 (4)高分子濃度の拡散効果は、乾燥後の膜形状の不均一性を抑制する。 以上の結果は実験で知られている結果と定性的に一致し、乾燥による膜形状の制御に指針を与えるものである。
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