Research Abstract |
本研究の目的は,超音波による広帯域の光弾性スペクトルを得ることが最終目的である。一般的に超音波周波数が増大すると,超音波の発信効率が悪くなるため,印加できる超音波強度が小さくなり,超音波による回折光強度が低下する。そのため装置の高感度化が課題となる。また,低音波強度のときの方位角変化と位相遅れの強度依存性についても検討する必要がある。詳細な数値解析の結果,音響光学効果の強さを示す指標のラマンナスパラメータが0.1近傍では,方位角変化と位相遅れは,レーザー光の入射条件によらず,周波数と物性値ののみで決まることがわかった。このことは,測定値から複雑な音響光学計算を経ることなく,光弾性スペクトルが得られることになり,装置の有用性を高め,また,複雑な光学調整も必要なくなることから,広帯域装置の作成にも適している。 上の数値計算による結果を背景に,高周波化の前段階として,光検出器をこれまで用いてきたフォトダイオードからフォトマルチプライヤーに変更する改良を行い,低強度超音波測定の優位性の検証をおこなった。試料にはペンチルシアノビフェニル(5CB)を用いた。従来法では,はラマンナスパラメータを0.2から1まで変化させ,その強度依存性を音響光学パラメータの最適化作業を行いつつ,強度0の極限の値を決定していた。フォトマルチプライヤによる方法ではラマンナスパラメータが0.1でも十分な感度が得られ,測定結果は,フォトダイトードでの解析結果の外挿点上にあった。また,値は超音波0の極限値とほぼ一致し,理論計算の結果をうらづけることとなった。このことは,低強度超音波を使うことにより,複雑な音響光学理論解析をすることなく,高い周波数までの測定が可能となることを実証した。現在,その成果を元に装置の高周波化に取り組んでいる。
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