2006 Fiscal Year Annual Research Report
外部刺激による皮膚バリアー機能を司る構造の変化過程のX線回折による研究
Project/Area Number |
18540411
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
八田 一郎 福井工業大学, 工学部, 教授 (70016070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 昇 高輝度光科学研究センター, 産業利用推進室, 協力研究員 (90353507)
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Keywords | X線回折 / 小角散乱 / 皮膚角層 / 細胞間脂質 / 個体差 / 高感度測定 / ラメラ構造 / 炭化水素鎖 |
Research Abstract |
皮膚角層のX線回折実験の研究において,角層の個体差による回折像の違いに悩ませられることがある.われわれの提案する方法では,一つの角層試料において溶液等の外部条件を変えたときの構造の変化過程を追跡することにより,外部条件の構造への影響や効果を敏感に捉えることを特徴とする.すなわち,X線回折実験用の溶液セルを作製し,その中に角層試料を入れ,外部条件として溶液の濃度や溶液を入れてからの時間の関数としてX線回折強度の変化を測定する.これにより,動物種それぞれで普遍的に観測される回折像(それが多少弱い強度であったりまたブロードであったりと差があったとしても)を指標にしてその変化を観測することにより構造変化を求めることを目的とする. われわれは一つの皮膚角層試料で化学物質を作用させる前と作用させた後の変化を追跡することにした.このためのX線回折実験用の液体セルを開発した.試料セルに皮膚角層試料を入れ,試料が動かないように保ちながら目的とする溶液を入れ,溶液で試料の周りを満たし,溶液中の化学物質が試料中に拡散し,その結果生ずる皮膚角層中の細胞間脂質によるX線回折像の時間変化を観測することに成功した.構造の時間に対する変化分を検出するので,化学物質が作用して起こる微少な構造変化を高感度で検出することが可能になった. この方法は各種の化学物質の皮膚角層中の細胞間脂質への効果を検出することが出来るが,はじめにグリセロールについて調べた.皮膚角層に水分量が10wt%と20wt%以上の場合に10%の濃度のグリセロール水溶液を作用したところ水分量が10wt%の場合にはラメラ構造および炭化水素鎖の充てん構造の形成が促進するのに対し,20wt%以上の場合にはこれと比べ大きな変化が起こらないことが分かった.これは皮膚角層の機能発現においてグリセロールが重要な役割を果たしていることを示唆している.
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Research Products
(2 results)