2006 Fiscal Year Annual Research Report
小惑星とクレーターのサイズ分布から探る後期隕石重爆撃期の起源
Project/Area Number |
18540426
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
伊藤 孝士 National Astronomical Observatory of Japan, 天文データセンター, 助教 (40280565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 二美 国立天文台, 国際連携準備室, 専門研究職員 (20399306)
武田 隆顕 国立天文台, 四次元デジタル宇宙プロジェクト, 専門研究職員 (70413961)
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Keywords | 小惑星 / クレーター / 衝突 / サイズ頻度分布 / 軌道計算 / 天体力学 |
Research Abstract |
小惑星は太陽系の衝突進化に於いて常に中心的な役割を果たして来た天体である。その中でも地球に極めて接近して衝突の可能性すらある天体は地球接近小惑星と呼ばれ、活発なサーベイ観測の対象となっている。地球接近小惑星の力学進化や惑星との具体的な衝突史については昔から多くの研究者が様々な仮説を立てて様々な推論を述べて来たが、実はその多くは単なる推測や憶測に過ぎず、精密な実証的研究はまだほとんど為されていないというのが現実である。本研究では天文観測と理論的な数値シミュレーション、および惑星地質データから得られた知見を組み合わせる新しい見地からこの問題に取り組み、小惑星の衝突現象とクレーターの起源、そして地球の初期史に関する新しいシナリオを構築する。これは新世紀の惑星科学に新しい橋頭堡を築く作業の一環となるはずである。 地球接近小惑星やクレーターの起源に関する実証的で定量的な研究が少ないのは、議論の根幹となる観測データがそもそも存在しないことがひとつの理由である。例えば小惑星の軌道進化や惑星への衝突の数値実験結果を月や惑星上のクレーターのサイズ分布と比較検証するには、小惑星のサイズ分布のデータが必要である。しかし現時点では比較的大きな小惑星(直径2-3km以上)のサイズ分布しか知られておらず、個数がより多いと思われる直径1km以下の小惑星に関するサイズ分布の情報は殆ど存在しない。また、小惑星破片の自転速度の分布は太陽エネルギーの吸収放散による小惑星の軌道変動過程(Yarkovsky効果と呼ばれる)に於いてとても重要な意味を持つが、これを知るための観測である小惑星の光度曲線の観測もごく限られた小惑星に関してしか行われていない。本研究では、小惑星のサイズと自転速度の情報を得るための天文観測を実施し、同時に小惑星と地球型惑星の衝突確率に関する数値シミュレーションも実施した。この数値シミュレーションはメインベルトの共鳴領域からやって来る小惑星破片と地球型惑星の衝突確率・衝突速度を計算し、それと地球型惑星上のクレーターのサイズ分布を比較するためのものである。その結果、メインベルトからやって来る小惑星の惑星の衝突確率は最大でも数パーセントを越えることは無く、月へのそれは最大でも0.1パーセント程度であることが分かった。またこうしたシミュレーション結果を月面上にある古いクレーターのサイズ分布と詳細に比較したところ、現在のメインベルト小惑星と40億年前の後期重爆撃期のクレーター衝突体のサイズに極めて高い相関が確認され、これは後期重爆撃期の力学的要因に対する強い制約を与えるものである。 一方で太陽系に於ける衝突破壊現象の直接証拠である若い小惑星族構成員の光度曲線観測も実施した。今年度までにKarin族と呼ばれる族構成員の光度曲線を約20個収集し、その上に最大構成員である832Karinの表面には宇宙風化起源と思われる特異な色変化の存在することを確認した。この結果は既に論文として公表されている。
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Research Products
(2 results)