2008 Fiscal Year Annual Research Report
小惑星とクレーターのサイズ分布から探る後期隕石重爆撃期の起源
Project/Area Number |
18540426
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
伊藤 孝士 National Astronomical Observatory of Japan, 天文データセンター, 助教 (40280565)
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Keywords | 小惑星 / クレーター / 天体力学 |
Research Abstract |
小惑星は太陽系の衝突進化に於いて常に中心的な役割を果たして来た天体である。その中でも地球に接近して衝突の可能性すらある天体は地球接近小惑星と呼ばれ、活発なサーベイ観測の対象となっている。本研究では天文観測と理論的な数値シミュレーション、および惑星地質データから得られた知見を組み合わせる見地からこの問題に取り組み、小惑星の衝突現象とクレーターの起源、そして地球の初期史に関する新しいシナリオを構築する。 後期重爆撃期のクレーターを作った衝突天体は約40億年前の存在であるが、私達が今観測できるのは現在の太陽系小天体のサイズ分布であり、両者を比較する際にはその間にある40億年という時間の存在を常に念頭に置く必要がある。この目的のため、私達は本年度より小惑星の衝突破壊進化を検分する予備的な数値実験(重力多体計算)を開始した。太陽系天体の衝突進化計算に関しては天体を流体粒子で近似する方法(SPH法等)が採用されることが多い。本研究の予備的計算でわかったことは、重力多体計算では実際の太陽系小天体(岩石や氷)のような固体の天体を固体のまま扱えるので、個々の天体の自転等を考慮することが容易であるということである。一方、重力多体計算の短所としては物質の相転移が簡単には表現できないということも判明した。だが中小の小惑星の多くが不規則な形状をしている事実から推測するに、それらの衝突合体では大規模な溶融や蒸発が発生したわけではなく、天体がぶつかって「壊れる」という日常的な意味での破壊現象が卓越したと考えられる。従ってこの点は私達の最終研究目的にとって重大な問題にはならないことも確認された。
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Research Products
(3 results)