Research Abstract |
本年度は,イメージ衛星の低エネルギー中性粒子撮像観測器(LENA)からのデータに,同時観測された他のデータをあわせた解析を進めるとともに,LENAの観測を定量的に説明するモデリングを遂行した.当初の目的であった4つの項目,1.磁気圏カスプ領域におけるイオンエントリーの時間空間特性,2.極端な太陽風条件下における磁気圏・電離圏のカップリング特性,3.マグネトポーズの位置の変動特性,4.磁気嵐に見られる電離圏からのイオンアウトフローの時間空間特性に関して以下の結果を得た.まず,1について,カスプのイオンエントリー領域が,惑星間空間磁場(IMF)のY-Z面での傾きに対応して位置を変える性質を明らかにした。また,そのIMFの傾きは,電離圏で発生するポーラーパッチに対しても重要であることを示した.2に関しては,太陽風動圧が高くかつIMFがある特定の方向をとる時に,カスプ域に"動くプロトンオーロラ"が現れることを見出し,その特性を明らかにした.3のマグネトポーズのリモートセンシングに関する研究では,太陽風の動圧が5〜15nPaで変化する時,マグネトポーズは100-200km/sの速さで揺らいでいることを明らかにし,マグネトポーズがこれまで考えられている以上にダイナミックに動いていることを示した.4については,磁気嵐時のサブストームに着目してイメージ衛星とジオテール衛星との同時観測イベントを解析した.サブストームに伴って電離圏からのイオンアウトフローのフラックスが増大している現象を同定し,そのイオンが磁気圏尾部のプラズマシートに到達するまでの時間は,サブストームの性質によって異なっていることが明らかになった.
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