2006 Fiscal Year Annual Research Report
前弧堆積盆地の巨大海底谷形成における鮮新世後期のテクトニクスと気候変動の役割
Project/Area Number |
18540451
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
保柳 康一 信州大学, 理学部, 助教授 (30202302)
|
Keywords | 環境変動 / 鮮新世後期 / テクトニクス / 気候変動 / 海底谷 / 陸棚の堆積作用 / 大年寺層 |
Research Abstract |
3.5Ma(350万年)前頃の気候温暖化とそれ以降2.0Maまでの寒冷化を大年寺層の陸棚堆積物の堆積相解析と有機物分析から読み取り,さらに陸棚上に2.7Ma以降に形成された巨大海底谷についてその成因の考察をおこなった. 18年度における成果は,(1)約20〜40万年周期の世界的な気候変動を反映した研究地域北方のデルタの前進・後退によって,研究地域では外側陸棚から内側陸棚へと堆積環境が変化した.(2)温暖期と寒冷期では有機物の起源と運搬保存作用に異なった特徴が認められた.温暖期(3.75-3.5Ma)には陸上で発生した洪水流によって陸源有機物が細粒堆積物と一緒に大量に陸棚へ運搬され,堆積したと考えられる.一方,寒冷期初期(3.5Ma-3.35Ma)には海洋表層で珪藻などの生産性が増加した結果,底層は貧酸素の状態となり,有機物は分解されずに地層中に多量に保存された.(3)引き続く寒冷期(3.35-2.6Ma)には,海洋性有機物の生産性の増加とデルタの前進に伴う陸源有機物を含む粗粒な堆積物の流入が繰り返した. さらに海底谷の形成要因は,上述の(3)の寒冷化によるデルタフロントの前進が陸棚上に多量の砂質堆積物をもたらしたことが一つの要因である.すなわち,巨大海底谷形成の引き金となった最初の海底地すべりは,2.6-2.7Maの生層準に極めて近い年代と推定され,鮮新世末の寒冷化開始時期と一致している.海底谷基底のブロックとそれを覆う砂岩層は,薄層細粒砂岩層を挟在するシルト岩層に覆われる.これは,2.5Ma頃の温暖期に対応され,新たなチャネルの形成とデルタフロントの前進によるスランプ層の形成は,2.3Ma頃から2.1Maにかけての寒冷化に対比させることが出来るかもしれない. なお,同じ手法による調査・研究は鮮新統大年寺層だけでなく,その前の時代のエスチュアリー堆積物である竜の口層や背弧堆積盆地である新潟県の鮮新統でも研究を進めた.今後,これらとの広域的対比により気候変動と島弧テクトニクスとの分離を進める.
|
Research Products
(6 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Sedimentation and preservation of organic matter in a Holocene estuary, Examples from the Niigata Plain, central Japan.2006
Author(s)
Omura, A., Hoyanagi, K., Yoshida, M., Yamazaki, A., Yamagishi, M., Urabe, A.
-
Journal Title
Incised-Valley Systems in Time and Space, SEPM Special Publ No.85
Pages: 99-115
-