Research Abstract |
平成19年度は,大年寺層に関して18年度までに終了した陸棚堆積物の堆積相解析,有機炭素量有機物組成,そしてその安定炭素同位体比の測定に加えて,同一の試料を用いてそこに含まれる珪藻化石の分析をおこない,その示す環境と海洋の温暖・寒冷条件を考察した.その結果,階層解析の示す古水深変遷は,これまでの堆積相や有機化学分析から示された海進・海退のサイクルとまったく同時的に変動していることがわかった.このことから,大年寺層の陸棚堆積物の堆積相とそこの含まれる有機物,珪藻化石は,大年寺層堆積期の4Maから1.8Maの間の環境変遷を10万年の精度記録しており,それが酸素同位体曲線で表された汎世界的海水準変動と同時に起こっていることが示された.さらに,この陸棚上に作られた巨大海底谷内を埋積した堆積物にって,試料を採取し,これまでに終わっている堆積相,有機化学分析に加えて,珪藻化石分析をおこなった.その結果は,現在考察中である. 一方,ほぼ同時期の4Maから3Maに背弧側で活動した海底谷(新潟県内の金津層)についても調査をおこない,その堆積相と有機物組成解析をおこない,有機物の安定炭素同位体を測定して,海底谷埋積堆積物の特徴を検討した.その結果,海底谷内とその周辺の泥質堆積物は,大年寺層海底谷埋積堆積物と同様に高い陸源有機物割合を持っていることが明らかになった. 前弧海盆と背弧海盆でほぼ同時期に活動した海底谷の特徴の比較から,大年寺層海底谷の形成に海水準低下が大きな役割を持っていたことが示されつっある.
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