Research Abstract |
Hl9年度においては,本研究の主対象である下北半島沖コアMR0406PC3において約5cm間隔で計203試料を微化石解析用に採取し,これらの試料に含まれる底生有孔虫化石の計数・同定を行い,底生有孔虫化石群集組成を求めた. これらの群集組成データにクラスター解析を行った結果,5つのクラスターが識別された.本年度までに得られたMR0406PC3コアの酸素同位体比層序および放射性炭素年代により年代モデルを構築し,各クラスターの対応を検討した結果,クラスター1は氷期(20.5〜32ka)に,クラスター2が氷期から融氷期への過渡期(16.5〜20.5ka),クラスター3および4は融氷期(10〜16.5ka)に対応することが明らかになった.また,2万年以前には,局所的にクラスター5の群集が繰り返し産出することが認められた. 一方,最終氷期以降における古気候記録の代表としてグリーンランド氷床コア(GISP2)の酸素同位体比変動と本コアにおけう底生有孔虫の個体数・産出頻度間でクロススペクトル解析を行った結果,Uvigerina, Epistominella, Bolivina, Globobulimina, Buliminellaの5属の底生有孔虫の変動に関して,GISP2の酸素同位体比変動と関連度の高い3000〜5000年の周期成分を抽出することが出来た.この時間スケールにおける変動成分は,北太平洋における中・深層水変動を示唆していると考えられた.一方,本コアにおけるオパール含有量と底生有孔虫変動をクロススペクトル解析した結果,一部のタクサに2000〜3000年周期が認められ,オパール含有量との関連度が高かった.これらの周期成分は,表層の生物生産変動を示していると考察された. 一方,当該地域における中・深層における古水温変化をより定量的に示すためには,日本近海における表層堆積物中の底生有孔虫Uvigerina akitaensis(Asano)の殻中のマグネシウム/カルシウム比による古水温計の開発が重要であり,前年度に引続いて高精度化へのキャリブレーション実験を実施した.
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