2007 Fiscal Year Annual Research Report
軟体動物の貝殻基質タンパク質の機能解析とその古生物学的応用
Project/Area Number |
18540460
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
更科 功 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 研究員 (90375444)
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Keywords | バイオミネラリゼーション / RNAi / モノアラガイ / アコヤガイ / メガイアワビ / 炭酸脱水酵素 / 貝殻基質タンパク質 / カルサイト |
Research Abstract |
RNAi法によりモノアラガイ(腹足綱有肺亜綱)のダーマトポンティンの機能解析を行った。2本鎖RNA注入後4-8日にはRNA発現の有意な低下が観測された。一方、貝殻の成長速度には有意に変化せず、明確な構造の変化もなかった。抗原抗体反応により外套膜外液(貝殻が形成される場)中のダーマトポンティン(タンパク質)は変化していなかった。従って、RNAの発現は低下しているが外套膜外液中のタンパク質は残存しているため、貝殻が正常に形成されたことが示唆された。 アコヤガイ(二枚貝綱)の貝殻は、外層が炭酸カルシウムの多形の一つであるカルサイト、内層が別の多形であるアラゴナイトで出来ている。アコヤガイの外套膜(貝殻形成に関与する器官)からアスパラギン酸に富む超酸性タンパク質アスペインを同定し一次構造を決定した。発現解析により貝殻外層のカルサイト形成にアスペインが関与していることが示唆された。アスペイン断片を合成し、invitroで結晶成長実験を行ったところ、アスパラギン酸に富んだ部分がカルサイト形成を促進することが観察され、アスペインが結晶多形の制御に関与していることが示唆された。 メガイアワビの外套膜から2種類の炭酸脱水酵素を同定し、一次構造を決定した。さらに、そのうちのーつが主要貝殻基質タンパク質であることを明らかにした。既に同定されている軟体動物の外套膜の3つの炭酸脱水酵素と系統解析を行った結果、炭酸脱水酵素は二枚貝と巻貝で独立に貝殻貝殻基質タンパク質に使い回しされたこと、アスパラギンとグリシンに富む特徴的な繰り返し配列も二枚貝と巻貝で独立に進化したことが示唆された。
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