| Research Abstract |
本研究は,主要な微化石の一つである石灰質ナンノ化石を形成する方解石の微小結晶に着目し,その結晶構造の違いと変化を解明することによって,過去2億年にわたる石灰質ナンノプランクトンの進化・変遷の過程を明らかにしようとするものである.とくに,本研究では,石灰質ナンノ化石の中でも,その主要なグループである「ナノリス」の方解石結晶の構造を詳細に明らかにすることを主眼において進めている.本年度は,まず新第三系および古第三系のナノリスのおおまかな検討を行い,結晶学的な特徴の把握と,詳細な検討の目安となるべき分類体系の整理をおこなった.その検討結果によれば,第三紀において示準化石として有効なディスコアスター属の場合,古第三紀と新第三紀とでその結晶成長の方向が全く異なるということが明らかになった.すなわち,ディスコアスターの場合,各個体を形成する結晶のタイプは同じであるが,成長させる方向がまったく逆であることが指摘できる.また,やはり示準化石として重要なスフェノリータスも,古いタイプと新しいタイプとで結晶構造が異なる可能性があることがわかっており,これらについては,これまでの分類と進化史が大幅に変わる可能性がある.なお,新第三系については,産出する化石種の電子顕微鏡による写真撮影が進んでおり,その形態と結晶解析をすすめる予備調査がおおむね終了した.さらに次年度以降に本格的検討を行う予定の,白亜系ならびにジュラ系の試料の入手にも着手した.
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