Research Abstract |
本研究は,アマミノクロウサギとその近縁属全体の系統進化と古生物地理を明らかにする研究のパート2であり,アジア,ヨーロッパ,アフリカから知られる絶滅・現生の近縁属と,Pliopen talagus属との系統関係および古生物地理を具体的に解明することを目的とする.今年度は3年計画の2年目である. 19年度の調査は,6月に大英自然史博物館にて,アフリカに現生するアカウサギ類3属5種およびアジアのアラゲウサギについて,そのタイプ標本を中心に詳細なデータの収集を,また,8-9月にフンボルト大学にて,アフリカの絶滅属Serenge tilagusの歯列および頭骨の詳しいデータの収集を,それぞれ行った.ユーラシアの絶滅属Trischizolagusについてはロシアの動物学研究所で同様な研究を行う予定であったが,同所アベリアノブ教授からの情報に従い今年度の調査は断念した.得られたデータや計測値,スケッチ等は,統計処理,論文用イラスト制作等,必要な処理を行った. これらと18年度の成果を合わせて,アマミノクロウサギおよびその近縁属の形態的形質について,分岐分類学的な分析を加えた結果,以下のような結果が得られた.(1)アフリカのPronolagusとBunolagusは互いに非常に近縁,(2)アフリカのPoelagusと南アジアのCaprolagusは互いに近縁であると同時に,アマミノクロウサギにも近縁,(3)PoelagusはPronolagusおよびBunolagusとは異なった時代にアフリカに侵入した,(4)これらの結果は,最近分子生物学から言われている系統進化とは,おおいに異なっている.(5)Serengetilagusは本研究の目的であるアマミノクロウサギ"族"には含まれない.以上の成果を,19年10月にアメリカで開かれたSVP学会で発表した.
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