Research Abstract |
赤道太平洋域において,1999年から2002年にかけて深度約3000mに係留されたMT3(0°N,145°E),MT5(0°N,175°E),MT6(0°N,170°W),MT7(0°N,160°W)の時系列セジメントトラップで捕集された試料について,F.profundaの頻度変化を調べたところ,赤道太平洋東部域は,従来のモデルと同様に,F.profundaの頻度の増加は生物生産量の減少を示した.ところが,西部域では,逆に,F.profundaの頻度の増加が生物生産量の増加と一致した.これは,西部赤道太平洋域では,表層への栄養塩の供給に影響を与える温度躍層の深度がF.profundaの生息適応深度より深くなるため,F.profundaの生息深度への栄養塩の供給が少なくF.profundaの生産量も増えず,結果として全円石藻に占めるF.profundaの頻度も増加しない.むしろ温度躍層がやや浅くなった時に,F.profundaの生産量が増加し,結果としてその頻度が増加すると考えられる.このF.profundaの頻度と生物生産量との関係が逆になる地点は,セジメントトラップサイトMT6とMT5の間に認められた.赤道太平洋域の有光層の上部層から下部層に生息するGephyrocapsa oceanicaの形態の特徴から,同種のコッコリスの長軸と中央エリアの長さの比を解析し,富栄養域と貧栄養域で,その比率が明らかに異なることから同様の分析をセジメントトラップ試料について行った.その結果,MT6では,コッコリスの長軸に対する中央エリアの長さの比は40%以下を示した.これは,Hagino et al.(2000)の富栄養域の結果と一致している.一方,MT5,MT3は,一部を除き,40%以上を示した.したがって,F.profundaの頻度変化を指標として古海洋環境を解析する際に,このG.oceanicaのサイズ解析を同時に行うことで,より精度の高い解析が可能となった.
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