Research Abstract |
粒界移動が進行する多結晶体では, 粒界によって掃かれた領域において, 鉱物-流体間の同位体平衡化が, 結晶内拡散のみによる場合に比べて素早く進行することが実験的に確かめられている(Nakamura, et.al., 2005 ; McCaig, et.al., 2006). このGB sweeping過程は, メタソマティズムや部分溶融体などにおける岩石-流体間の化学輸送の速度過程を支配している可能性がある. そこでダナイト-Niの系を例として最上部マントル条件(1200℃, 1.2 GPa)で, ピストンシリンダー型装置を用いた実験を行い, 適合元素の化学交換における上記過程の効果を検証した. 予め乾燥させておいた出発物質を(Ni-)Pt-NiOの二または三層構造のカプセルに封入した上、1-3 wt. %の蒸留水を加えて2-763時間の実験を行った。実験開始後, フォルステライト多結晶体の粒成長とともに, Niの粒界拡散と結晶内拡散が進行する. EBSDによる結晶方位の解析では, 実験産物の結晶方位はランダムな分布を示し, 低角粒界では, 粒界異動速度と, 粒界拡散速度が遅いことが確かめられた. 2次元拡散モデル(Mishin & Razumovskii, 1992)を用いた実験結果の定量的な解析によれば, 粒界に掃かれた部分の体積は最大約50%であり, このとき試料の平均NiO濃度は, 粒界移動が起こらない場合の計算値の約4倍に達する. この結果は、岩石中での適合元素濃度変化が、粒界移動によって大幅に促進されることを示し, 動的再結晶などによって細粒化した岩石ほどメタソマティズムや流体との化学平衡化が迅速に進行することを示す.
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