2006 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的効果を考慮した核磁気共鳴スペクトルパラメーターの理論計算
Project/Area Number |
18550003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
福井 洋之 北見工業大学, 工学部, 教授 (30002041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船木 稔 北見工業大学, 工学部, 助手 (90113711)
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Keywords | 相対論的効果 / NMR / 化学シフト / Dirac方程式 / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
Dirac方程式の解である1電子波動関数は、4つの成分をもち、4成分スピノールと呼ばれる。4つの成分のうち、最初の2成分を大成分、残りの2成分を小成分という。小成分を求めるためには、大成分を求める場合と比較して、約2倍の展開関数(基底関数という)を必要とし、計算は容易ではない。そこで、本研究では、小成分を何らかの方法によって消去し、あらわには大成分のみを求める2成分スピノール方程式を用いて、NMRの磁気遮蔽テンソルの計算を行った。重原子を含む分子のNMR遮蔽テンソルには、相対論的効果の寄与が大きいことが知られている。Dirac方程式を2成分方程式に書き換える方法には、大きく分けて、次の2通りの方法がある。1.Dirac方程式をユニタリ変換して、1電子波動関数が大成分か小成分のいずれか一方の成分のみをもつようにする。これをデカップリングと呼んでいる。光の速度が無限大になった極限では、Dirac方程式はSchrodinger方程式になり、1電子波動関数は大成分のみをもつようになる。そこで、1電子波動関数が大成分のみをもつような2成分方程式(電子方程式という)を求める。2.小成分を(演算子)×(大成分)の形で表すことによって、小成分を消去する方法で、小成分消去法と呼ばれる。本研究では、2.の小成分消去法に基づき、3編の論文をアメリカ物理学雑誌J.Chem.Phys.に発表した。1番目の論文は、新しい小成分消去法の提案である。2番目と3番目の論文はその改良であり、とくに2番目の論文では、従来考慮されていなかった2電子間スピン軌道相互作用を理論に加えて磁気遮蔽テンソルの計算を行った。現在、1.のユニタリ変換の方法に基づいた論文1編をJ.Chem.Physに投稿中である。この論文では、従来の不完全なデカップリングを完全なデカップリングにするよう理論の改良を行った。
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