2009 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的効果を考慮した核磁気共鳴スペクトルパラメーターの理論計算
Project/Area Number |
18550003
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
福井 洋之 Kitami Institute of Technology, 工学部, 教授 (30002041)
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Keywords | 量子化学 / NMR / 化学シフト / Dirac方程式 / 相対論的効果 |
Research Abstract |
Dirac方程式の解である1電子波動関数は、4つの成分をもち、4成分スビフールと呼ばれる。4つの成分のうち、最初の2成分を大成分、残りの2成分を小成分という。小成分を求めるためには、大成分を求める場合と比較して、より多くの基底関数が必要であり、計算は困難である。そこで、2008年度までは、小成分を消去して大成分のみをおめる2成分法を用いて、NMRの核磁気遮蔽テンソルの計算を行ってきた。即ち、小成分を(演算子)×(大成分)の形で表すことによって小成分を消去する小成分消去法(NESC法)を用いて計算を行ってきた。このとき、c^<-4>のオーダー(cは光の速度)の相対論的効果を無視する通常の計算方法では、計算値は小さくなり過ぎ、はなはだ不十分な結果となった。そこで、c^<-4>のオーダーの相対論的効果を摂動論的に加えたところ、発散的な項が現れて計算値は大きくなり過ぎ、非現実的な値となった。原子核を点電荷ではなく広がりをもった有限核と考えて、c^<-4>オーダーの相対論的効果を含めた計算を行ったところ、計算値は著しく改善されたが、計算値にはなお発散的傾向が残った。そこで、2009年度は、4成分を独立に計算する4成分法を用いて計算を行った。その際、NMRの核磁気遮蔽テンソルを計算するためには、通常のkinetic balance (KB)法では不十分なので、小成分を展開する基底関数に磁場効果を含めるmagnetic balance (MB)法を用いて計算を行った。その結果、よい計算値が得られた。結果はBull.Chem.Soc.Japanの本年6月号に掲載される予定である。
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