2006 Fiscal Year Annual Research Report
電子・負イオンのヘテロ溶媒和構造-溶媒和による安定化の微視的理解を目指して-
Project/Area Number |
18550007
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 敬 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10164211)
|
Keywords | クラスター / 溶媒和電子 / 原子価負イオン / 水素結合ネットワーク |
Research Abstract |
本研究では,気相の分子集合体(気相クラスター)を利用して,電子・短寿命の原子価負イオンの周囲に人工的な溶媒和環境を調製し,その安定性と構造を系統的に調べることによって「溶媒和による安定化の微視的理解」を目指し,以下の研究を実施した. 1.ヘテロな溶媒環境をもつ溶媒和電子の構造:ビーム・エントレインメント法と質量分析法,負イオン光電子分光法を併用し,(H_2O)_n^-がD_2O,CH_3OHなどを取り込んだ際に形成される水素結合ネットワーク構造を調べた.その結果,電子-水素結合(e【triple bond】H-O)を保持しながら,D_2O,CH_3OHを水素結合ネットワーク内に取り込むことが明らかとなった.この成果は,溶媒和電子の安定化に対するエントレーナー(共溶媒)効果の分子論的描像を与えるものである. 2.ヘテロ溶媒和による原子価負イオンの安定化メカニズムの解明:光電子イメッジング分光法を用いて(CH_3)_2CO,H_2Oを含む混合クラスター負イオンの電子構造を調べた.その結果,短寿命原子価負イオン(CH_3)_2CO^-の安定化メカニズムに関して,プロトン性溶媒分子が水素結合を介して負イオンを安定化させるのではなく,「複数の双極子場によって安定化した原子価負イオン(valence anion stabilized by surrounding multi-dipoles)」が形成されることを示した.さらに,二量体分子負イオン[(CH_3)_2CO]_2^-を初めて観測し,高精度ab initio計算との併用によって,二つのπ*_<co>軌道を重ね合わせたSOMOに余剰電子がトラップされた構造を明らかにした.これらの成果は「溶媒和による短寿命原子価負イオンの安定化」を系統的に説明するモデルの構築に繋がるものである.
|